国産車の名前(車名)には、他国の言語が使われることが多い。英語やスペイン語、ポルトガル語やギリシャ語などが数多く並び、クルマを音の響きから洗練している。ただ、外国語優勢な車名の中、日本語の響きや語感を大切にしているクルマも数は少ないが残っているのだ。今も日本語の車名で頑張るクルマ達を紹介していく。
文/佐々木 亘 写真╱ベストカー編集部、日産、トヨタ、三菱
■超英語優勢の中で唯一頑張るトヨタの日本語車
まずは、国内最大の車種数を誇るトヨタから見ていこう。基本的には英語をベースに車名が付けられており、時折ギリシャ語やヨーロッパの言語を使用することもある。
現行車で日本語として意味の通る名前が付けられたクルマは、「MIRAI」だけだ。その名の通り、FCEVとして未来への提案、未来のクルマ社会への第一歩を踏み出したモデルである。
数あるクルマの中でも、日本語車名が非常に少ないのがトヨタ流だ。過去には、日本語の冠(かんむり)をもじった「カムリ」や、SAI(才)があったが、現在は生産を終えている。
世界のトヨタと言われるだけに、グローバルに通じやすい言語から車名を付けることが多いのだろう。しかし、トヨタが日本語車名のクルマを作って世界に届けてくれることで、MANGA(漫画)のように、日本語のままで世界に通じる言葉がもっと生まれるような気もするのだ。
トヨタさん、日本語をもっと世界に広めるために日本語由来の車名を、ご検討いただきたい。
■ありそうでない日本語車名!タントは日本語じゃないの?
ホンダの現行車では、日本語車名は存在しない。英語車名がメインとなり、最近ではアルファベットの組み合わせによる記号的な名前も増えている。
スズキも同様に日本語名のクルマは無い。英語が軸になっているが、ソリオではスペイン語を使うなど、印象深い音使いが目立つ。かつては「キザシ」があったのに。
マツダも言わずもがな、日本語車名は存在しない。ロードスター以外は基本的に数字表記で、SUVだけアルファベットとの組みあわせとなっている。法則があり覚えやすいが、名前でキャラクターは立ちにくいだろう。
ダイハツには「タント」があるのではと思っていたのだが、タントはまさかのイタリア語。その意味は「とても広い・たくさんの」だった。「たーんとお食べ」の「たんと」ではなかったのが残念だ。
スバル・いすゞにも日本語車名は存在しない。クルマ=英語という文化は、根強く残っているようだ。
■日産と三菱が守る日本語の響き!洗練された言葉選びが秀逸だ
多くの自動車メーカーが、日本語の響きを採用しない中で、日産・三菱アライアンスは、現行車にしっかりと日本語を残しているのが素晴らしい。
まずは、日産のサクラ。日本の心でもある桜をそのまま車名にした。日産は、日本語車名の導入には昔から積極的で、「フーガ(風雅)」・「バサラ(婆娑羅)」など、親しみやすい名前を付けることが多いのだ。
三菱では「eK」シリーズが、日本語車名として残り続ける。表記はeKだが、その意味は「良い軽」というダジャレスタイル。それでも名は体を表し、本当に良い軽自動車になっているから素敵なネーミングセンスだと思う。
また、光岡自動車はオロチ(大蛇)・リューギ(流儀)・ヒミコ(卑弥呼)など、日本語として意味の通るクルマの名前が多い。ミツオカのような文化が、日本の自動車産業に広がってほしいものだ。
日本国内を走る新幹線のように、日本語由来の製品名がもっと広まってもいいような気がする。特に大和言葉(和語)の柔らかい雰囲気は、コンパクトカーやミニバンなど、優しい印象を持つクルマに似合いそうだ。
日本語という自国の言語がある日本のクルマだからこそ、名づけには日本的なこだわりを残しておいてほしいと思う。
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