小さいAクラスから各種SUV、ワゴンにクーペ、カブリオレと、とにかくラインナップが多いメルセデス・ベンツ。しかし、過去には1台で終わってしまった車種も存在している。しかもそれが中古車市場では不思議なほど高値で取引されている。今回は高級ミニバンRクラスの今を解説してみたい。
文:古賀貴司(自動車王国)/写真:メルセデス・ベンツ
【画像ギャラリー】10年以上前なのにまだ700万ってマジか…Rクラス衝撃の内装がコレ(7枚)画像ギャラリー■空いていた高級ミニバンという市場に投入されたRクラス
2002年に「ビジョンGTS」、2004年に「ビジョンR」としてデトロイト・モーターショーにて披露されたメルセデス・ベンツのコンセプトカー。その後、2005年から「Rクラス」として市販されることになった。
メルセデス・ベンツはRクラスをステーションワゴン、クロスオーバー、SUV、バンの要素を併せ持つ“新しい高級乗用車カテゴリー”として顧客に売り込もうとした。
当時、メルセデス・ベンツにとって最大のマーケットであったアメリカにおいて、新たな購買層を獲得すべく生まれた車と言っても差し支えないだろう。
乗用車カテゴリーを見渡した際、MPV市場での高級車の不在に着目したものと思われる。
たしかにアメリカにおけるMPV人気は、日本で言うところのミニバン人気と似ていた時期がある。Rクラスの年間販売台数は5万台と野心的な目標を掲げていた。
【画像ギャラリー】10年以上前なのにまだ700万ってマジか…Rクラス衝撃の内装がコレ(7枚)画像ギャラリー■モンスターエンジンを積むAMG 63も用意されていた
プラットフォームは同時期のMクラスやGLクラスと共有しており、アメリカにて生産された。MPVながら全長4930×全幅1920×全高1660mmと威風堂々としたボディサイズだったのは、アメリカ市場がメインターゲットだったからと推測できる。
全長はほとんどトヨタ・アルファード(現行)並みで、全幅に至ってはRクラスのほうがワイドだった。Rクラスは3.5L V6エンジンの「R350」と5L V8のエンジンの「R500」ほか、AMGでは6.3L V8のモンスター「R63」も存在していた。
いずれも駆動方式は4マチックを採用。なお、R63は高級MPVながら0→100㎞/h加速4.6秒と今の水準でも目を見張るものだった。日本におけるRクラスの販売台数を示す資料は手元に存在しないが、決して芳しいものではなかっただろう。
売れると見込んだアメリカ市場においても2006年に1万8000台強というピークこそあったものの、2007年は1万3,000台強、2008年は7,000台強、2009年以降は3,000台に満たなかった。
リーマンショックという世界的な金融不況の影響もあったが、メルセデス・ベンツとて世界的なクロスオーバーやSUVブームの流れには逆らえなかったのだろう。
アメリカでの販売は2013年に、日本では2014年に販売を終了したが、中国だけは年間1万台5,000台弱がコンスタントに売れ続け、2017年まで販売終了しなかった。つまり、1代限りで絶版となっている。
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