自国で自動車免許を所持している訪日外国人は、「外免切替」という制度で日本の免許に切り替えて運転することができる。だが、近年この制度の問題点が明るみになってきている。いったいどんな制度で、どんな問題点があるのか? 現場を取材した加藤博人氏が解説する。
※本稿は2024年11月のものです
文:加藤博人/写真:加藤博人、ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=Cultura Creative@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年12月10日号
■ニュースなどで取り上げられる「外免切替」とは?
2024年9月以降、SNSやウェブニュース、地上波のニュース番組などで話題になっている「外免切替」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
外免切替とは、「外国免許からの切り替え」のことで、自国で有効な運転免許の保有を条件に、その免許をキープしながら日本の免許も取得できる制度だ。いったん切り替えれば日本で更新してゆくことになるので、自国の免許の有効期限が切れても問題はない。
外免切替で日本の免許を取得する外国人は圧倒的に中国籍やベトナム籍の人々が多い。また、難民申請中や仮放免中のクルド人でさえもこの制度で日本の免許が入手できるというから驚く。
なぜ中国やベトナムが多いのか? それは、いずれの国もジュネーブ条約を締約していないことに関係している。日本で有効な国際免許はジュネーブ条約様式のみ。つまり、締約国ではない中国やベトナムの免許は日本では無効で無免許と同様の扱いになる。
しかし、外免切替で日本の免許を取得してさらに国際免許も取得してしまえば、世界約100カ国で合法的に運転が可能となる。費用も数千円程度なので日本で教習所に通って日本の免許を取得するよりはるかに安価で簡単だ。
そして驚くことに、外免切替の申請は住民登録がなくても在留カードがなくても「ホテルの住所」だけで取得できてしまう。宿泊したホテルで「一時帰国(滞在)証明書」を書いてもらえばOK。ホテルが外免切替後の日本の免許証に住所とホテル名が記載されることを了承することが条件だ。
横浜や鮫洲の免許センターで確認したところ、「ほとんどのホテルはそれを認めないから現実的には無理では」と担当者が話していたが、実際はホテルの住所で切替に成功した日本の免許証の写真がたくさんSNSにも上がっている。
現状、ホテルが了承すればホテルの住所で外免切替は可能。つまりこれは、観光ビザでの申請も可能ということになる。
【画像ギャラリー】学科試験が10問!? 7問正解で合格!? 何もかもがザルすぎる外国人の「外免切替」制度(6枚)画像ギャラリー■外免切替の問題点
外免切替で一番の問題点は、知識確認(学科試験)の問題があまりにも少なすぎるということである。もちろん、外免切替は自国で免許を取得していることが条件で、基本的な標識なども国際的に共通しているものも多々ある。
とはいえ、学科試験はわずか10問。そのうち7問正解すれば学科試験合格とは、あまりにもイージー過ぎないか? 私たち日本人が日本で免許を取る時には仮免の学科は50問、本免許は100問が出題されていずれも9割以上で合格となる。
運転免許の取得方法や更新の制度が日本とはまったく異なる国もあるし、一度取得すれば10年以上更新なしという国もある。左側・右側通行の違い、交通ルールの常識や道路環境に加え最も重要な、事故でけが人が出た時の救護義務に関しても日本とはまるで違う国もあるわけだ。
わずか10問中7問正解の知識でマナーやモラルの違いまでカバーできるのか?
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