全固体電池のメリットは、エネルギー密度が高いメリットを活かして、同じ大きさのバッテリーでもより長時間の走行が可能なこと。早期導入をするべく、日本メーカーも開発を進めている。ところが、中国に技術力が抜かれてしまっている可能性も。ウカウカしている時間あまりないんじゃない!?
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】これはシルビアの後継!? 全固体電池採用を見据えたコンセプトカーの[マックスアウト]がめっちゃ美しい!!!!!(12枚)画像ギャラリー■全固体電池実用化に高まる期待
多くの日本人が全固体電池を「伝家の宝刀」だと思っていることだろう。実際、全固体電池の開発は日本が先行。すでにホンダは試作工場と思えないほど規模の大きい設備投資を始めている。
三菱自動車と組んだGSユアサと並び、世界に先駆けて電気自動車用のリチウムイオン電池を実用化した日産も全固体電池の開発を進めている。ホンダと日産の統合で加速されるか? その前に全固体電池を紹介しておきたい。
現在の電池はプラス極とマイナス極の間にゼリー状の電解質を使っている。乾電池を放置しておくと漏れてくる液体をイメージしていただければよかろう。
電解質が液体だと、当然ながら高熱になれば体積が増す。だからこそ高温になると、電池を守るためセーブモードに入る。それでも膨張と縮小を繰り返すため、物理的に不安定になってしまう。
全固体電池は固体の電解質を使うというもの。固体なら高温になっても液漏れなどの心配が無くなり、高温になったときの冷却だって容易。ゼリー状の電解質を使う電池より圧倒的に高い充放電性能を引き出せます。
大ざっぱに言って最新のリチウム電池の数倍をイメージしていただければよかろう。プリウス級の電気自動車に実用航続距離600kmの電池(100kWh)を搭載可能。急速充電時間も5分で400km程度。全固体電池が実用化されたらガソリン車の同じ使い勝手になると言われてます。
だからこそ伝家の宝刀扱いになっているワケ。前述の通り日本勢は開発競争で先行しており、ホンダも日産も2027年あたりにプロトタイプを完成させ、2030年には量産に入ると主張している。ホンダと日産の技術力を持ってすれば全固体電池の開発は可能だと考えます。
ただし。全固体電池の開発に取り組んでいるのは日本だけじゃ無い。すでに日本を遙かに超える電気自動車用電池を生産している中国や韓国も全固体電池の開発に着手している。
【画像ギャラリー】これはシルビアの後継!? 全固体電池採用を見据えたコンセプトカーの[マックスアウト]がめっちゃ美しい!!!!!(12枚)画像ギャラリー■中国の技術力にはもう追い付けない
中国などは全固体電池の手前にある半固体電池 (電解質がゴルフボールくらいの硬さと言われる) の実用化が始まるようだ。半固体電気も現在進行形の電池の2倍近い性能を持つらしい。
考えて頂きたい。リチウムイオン電池を最初に実用化したのは日本だ。2010年(三菱自動車は2008年から限定で生産開始していた)としておく。中国が本格的に電池の開発を始めたのは2014年あたり。我が国と言えば、電気自動車の売れ行きが伸び悩み、当然ながら電池の開発も進まない。
2010年に登場した初代リーフの電池搭載スペースに積める電池が24kWhから40kWhになった程度。中国は開発に拍車を掛けた。それから4年後の2018年には性能で日本を抜き、今や勝負にならないレベル。生産コストだけでなく、材料コストだって安価。
しかも生産量が圧倒的に違う。直近で考えると、日本勢より高性能な3元系リチウムイオン電池(日本勢が使っているタイプ)で日本の半値以下。リン酸鉄リチウム電池は3分の1以下のコストだと言われている。
全固体電池は我が国が先行していたものの、すでに抜かれていると考えていい。全固体電池は性能と耐久性の両立が難しいという。
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コメント
コメントの使い方そのチャイナに日本の技術をタダ同然で譲る道筋を立てた日本の政治家や官僚はどの様に責任を取るつもりなのでしょうかね?
勿論、政治家や官僚に限らず、見識の低い民間の経営者や学術関係者も同罪です。
国沢さんの記事をいつも興味深く読ませていただいております。
本論ではありませんが、国沢さんの記事では誤植が多く(今回は時前)、ベストカーさんで校閲はしないのでしょうか?
いい記事を書いているのに勿体無いと思います。
中国は多少安全性に問題があってもドンドン作る。作りながら考えて改善する。数をこなす内に技術が進歩する。日本は100%の安全性を確認してから商品化する。品質に対する経営方針の違いが商品化のスピード、コスト競争力に大きく影響する。
ま、そんなネガティブなこと言っていたら、何にも事が進まないので、まずは、全力で日の丸連合で開発するのみだと思います
当然、特許戦略も大事なのは各メーカーは百も承知な筈で、抜かりなくやっていると信じます
全個体電池が仮に完成したとして、一般家庭で使用する3日から1週間分の電力を5分で充電可能にするインフラ整備が大変そう。
電池ではないが、今までにない新製品を開発した現場にいた人間からすると・・ 国沢氏の主張は身に染みて理解出来る。今の日本の開発速度では残念ながら、負ける。経営陣の現状の理解度(危機感の無さ)は致命的だ。トップの無理解で開発で負けるのは技術者として非常に悔しい。結局、予算不足、人員不足に対して、技術者が万年残業・24時間実験でやるのが日本のサラリーマン技術者の宿命だ。頑張れ、技術者。
国沢さんの指摘、当たってますよ。中国の強みは開発のスピ-ドが 日本と全然違うそうだ。これはBYDに派遣されたトヨタの技術員の感想。例えばの話ですが、日本は一つの法律施行されるまで最低2年要しますが、中国では翌年というより即、施行されますからね。