トヨタ アベンシス 欧州仕込みの実力と悲哀 【偉大な生産終了車】

トヨタ アベンシス 欧州仕込みの実力と悲哀 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ アベンシス(1997-2018)をご紹介します。

【画像ギャラリー】欧州専売を経て日本へ! トヨタ 歴代アベンシスの姿をギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:TOYOTA


■初代は欧州専売 2代目から逆輸入の形で日本へ

 トヨタが英国のToyota Motor Manufacturing (UK)Ltd.で生産し、日本へも一部が輸入販売され、一部の車好きからは大好評となったDセグメントのセダンおよびステーションワゴン。

 しかし国民性や交通環境などの違いから(日本では)ヒットせず、静かに消えていった名車。

 それが、2代目および3代目のトヨタ アベンシスです。

2代目アベンシス(セダン)※写真は欧州仕様
2代目アベンシス(ワゴン)※写真は欧州仕様

 1997年から2003年まで販売された初代アベンシスは欧州専売車でした。しかし2003年3月に欧州で発売された2代目アベンシスは、同年10月から逆輸入車として日本国内でも販売されることになったのです。

 その生産は前述のとおりToyota Motor Manufacturing (UK)Ltd.で、デザインはフランスのトヨタ・ヨーロッパ・デザイン・ディべロップメントが担当。

 そしてセダンの「アベンシス」とステーションワゴンの「アベンシスワゴン」が日本市場に導入されました。

 2代目アベンシスはセダンもワゴンも、それはそれは素晴らしい出来映えの車でした。

2代目セダン(上)とワゴン(下)のサイドビュー

 日本仕様に用意されたエンジンは最高出力155psの2Lガソリン直噴だけで、トランスミッションはいささか新鮮味に欠けるオーソドックスな4速AT(※2005年10月の一部改良で2.4Lエンジンを追加し、ATを5速に改めましたが)。

 しかしながら「欧州車を超えるトヨタの欧州車」をテーマに開発され、7000時間を割いたというシンプルビューティなデザインと、欧州各地における6万kmのテスト走行で得た走りのテイストは、同時代のライバル、つまりフォルクスワーゲン パサートやオペル ベクトラなどにもまったく引けを取らないものがありました。

 そんな2代目(日本では初代)アベンシスは2006年7月のマイナーチェンジを経て2008年末まで販売されました。

 欧州では2009年1月からすぐさま3代目が発売されたのですが、これは日本市場には導入されませんでした。一部の車好きがその走りを愛したアベンシスというブランドは、日本ではしばらくの間「空白」となっていたのです。

 しかし2011年9月、3代目アベンシスは日本市場にも導入されることになりました。とはいえ、まずは2011年7月から10月までの期間限定生産だったのですが、とにかく導入はされました。

欧州から見れば通算3代目、日本のみでは2代目となるアベンシス。2011年6月から「日本のお客様の声」に応える形で導入が決定された

 日本に導入された3代目(日本では2代目)はステーションワゴンのみで、エンジンは2リッター直4DOHCの3ZR-FAE型オンリー。トランスミッションは、欧州専用にチューニングされたというパドルシフト付きのCVT(7段スポーツシーケンシャルシフトマチック)でした。

 こちらも2012年や2015年のマイナーチェンジを経ながら細々と販売が続いたのですが、結果としてヒットには至らず、残念ながら2018年4月に販売を終了。

 以降、今のところ「アベンシス」というブランドは再び消滅状態となっています。

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