トヨタ アベンシス 欧州仕込みの実力と悲哀 【偉大な生産終了車】

■力作ながら日本では振るわず…その理由は「交通事情」と「国民性」!?

 前段にて「アベンシスは同時代のフォルクスワーゲン パサートやオペル ベクトラなどにもまったく引けを取らないものがあった」と申し上げましたが、トヨタ アベンシスは2代目も3代目も、まさにそんなニュアンスの高速巡航が堪能できる素晴らしいDセグメント車でした。

 しかしそのような素晴らしいモデルがなぜ、日本ではヒット作にならなかったのでしょうか?

 さまざまな理由があるはずなので断定はしづらいのですが、筆者としては「欧州と日本における国民性および交通環境の違いが主たる原因だった」と考えています。

3代目アベンシスのリアビュー。流麗でダイナミックなスタイルを備えている

 トヨタ アベンシスは、2代目も3代目も「わかりやすい華」は特にない車でした。

 強烈なターボチャージャーが付いているわけでもなく、ものすごく便利な装備が付いているわけでもない、どちらかと言えば「地味な車」です。

 ですが地味な代わりに車としての本質部分、つまり「どんな路面状況でもドライブフィールにあいまいなところがなく、その気になれば300kmぐらい走り続けても疲れず、そして人も荷物もしっかり収容できる」という部分においては「派手」とすら言えるほどの実力を備えた車でした。

取り回しやすいミディアムサイズの全長4765mmに、大人5人がゆったりと乗ることができるゆとりの居住空間を実現(写真は3代目)

 それゆえ、長距離を高速巡航する機会も多い欧州の人々は、アベンシスの魅力をスッと理解することができました。言い方を変えるとアベンシスの表層ではなく本質に、自分のお金を喜んで支払ったのです。

 しかし日本社会の現実から考えると、「ハイスピードで300km先の目的地まで一気に駆け抜ける」なんてことはほとんどありません。やりたくても、法規や道路事情の関係でほぼ無理です。

 そのため、もちろん一概には言えないのですが、「地味だけど、走ると凄い車」よりも「わかりやすいキャラも備えた車」――例えばターボが凄いとか、車内が広いとか、デザイン的にキラキラしてるとか――のほうが売れる傾向があります。

 それゆえアベンシスは「本質」みたいな部分を重視するカーマニアには刺さったのですが、そうではない人々……というか、世の中の大多数を占めている「フツーにトヨタ車とかを買う」にとっては、今ひとつ意味不明なセダン/ステーションワゴンだったのです。

内装は、欧州車らしい硬質感のある造形に、チタン調やめっきの加飾を随所に使用。欧州におけるトヨタブランドのフラッグシップモデルにふさわしい上質感を表現した(写真は3代目)

 このようにしてアベンシスは、日本市場では人気薄なまま終わってしまいました。

 しかし最近のカローラやヤリスの素晴らしい走りっぷり見るにつけ、今後は日本でも「アベンシス的なトヨタ車=素晴らしい走りを披露してくれるトヨタ車」がごく当たり前に発売され、そして普通に受け入れられる時代がやってくるのかもしれない……なんて、筆者は夢想しています。

■トヨタ アベンシス 主要諸元
・全長×全幅×全高:4700mm×1760mm×1525mm
・ホイールベース:2700mm
・車重:1410kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc 
・最高出力:155ps/6000rpm
・最大トルク:19.6kg-m/4000rpm
・燃費:13.0km/L(10・15モード)
・価格:272万円(03年式アベンシスワゴン Liスポーツパッケージ)

【画像ギャラリー】欧州専売を経て日本へ! トヨタ 歴代アベンシスの姿をギャラリーでチェック!!!

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