「最も変なクルマはどれ?」と聞かれたら、結構上位に入ってくると思うのが、日産のエスカルゴだ。日本人ってこういう面白いことをカタチに出来たんだねと思いながら、真面目に凝り固まった令和の時代に喝を入れる存在にもなりそう。クルマの作る新しい価値観を、とくとご覧あれ。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】見れば見るほど異質だけども可愛く見えてきちゃうんだよな! (11枚)画像ギャラリー今コレが街中を走っていたらエモい
変なコンセプト・変なデザインのクルマは、これまでもいくつか存在しているのだが、これを商用車に絞っていくと、その候補は少ない。
ビジネスで使う以上、それほど華美でなく、質実剛健で実用性に富んだクルマでなければ商用モデルは務まらないと、今の人の多くは考えるであろう。
ハイエースやプロボックスなどは、プロの道具としての機能美はあるが、彼らがクルマとして目立つことはほとんどないはずだ。
そんな商用車の常識を覆したのがエスカルゴである。綺麗な曲面のフードにポコンと飛び出すヘッドランプは、カタツムリの目玉のよう。正面から見つめられると、つぶらな瞳に吸い込まれそうだ。
円形のボディラインにフラットなサイドパネルはシンプルなシルエットなのだが、ボンネットとの調和が見事で、そのコントラストに見とれてしまう。バックシャンも四角いバックドアに半円形のリアコンビランプが可愛らしい。
超絶目立つこのクルマが、貨物登録され街中を走っていた。それが平成の初頭、バブル経済の終盤のことだ。令和の現代から見たら、奇天烈な存在に見えるが、商用車が目立つ存在であることには大きなメリットもある。
街中を走る商用車は、いわば会社の看板を背負って走っているも同じこと。つまりその看板が目立ちに目立って話題を呼べば、その会社への注目が集まることとなる。エスカルゴは素材そのものが目立つわけだから、商売用のアドボードに最適なのだ。
配送・配達を行いながら、広告宣伝も打てる。一石二鳥のこんなビジネスカーを、今の真面目すぎる世の中では生み出すことができないだろう。
【画像ギャラリー】見れば見るほど異質だけども可愛く見えてきちゃうんだよな! (11枚)画像ギャラリー日本初のインパネシフトはエスカルゴから
エスカルゴは車内も面白い。ダッシュボードを平らにしてテーブルとして使用できる。そのためにメーターはダッシュボード中央に、アンティークラジオのような見た目の半円形のものがポンとおいてあるだけ。
ステアリングは珍しい1本スポークで、シフトレバーはインパネ中央部のエアコン吹き出し口よりも上に設置されている。これが日本初のインパネシフトなのだ。
シートに座ると多数の違和感がある車内だが、これらの違和感が様々な効果を持っているから面白い。シンプルメーターや低く削られたテーブル兼用のダッシュボードと高い車高のおかげで、ウィンドウエリアが非常に広く、運転視界が最高にイイ。
インパネシフトを採用したことで、前席の左右ウォークスルーも可能なのだ。左右どちらからでも乗り降りができるというのは、配達業で重宝する機能である。
【画像ギャラリー】見れば見るほど異質だけども可愛く見えてきちゃうんだよな! (11枚)画像ギャラリー洒落が通じる豊かな時代に戻りたい
エスカルゴの名前はその見た目(カタツムリ)だけかと思いきや、アルファベット表記が「S-Cargo」となり、貨物のCargoをスペイン語読みした「カルゴ」がかかっている。車名も洒落っ気たっぷりだ。
当時はお花屋さんやお弁当屋さんなど、生活を華やかにする仕事の配達や配送にエスカルゴがよく使われていた記憶がある。明るい色のエプロンを付けた優しいお姉さんと共に、エスカルゴが街に笑顔を届けていた。もしかしたらエスカルゴのSは、SmileのSだったのかもしれない。
クルマがデザインで笑顔を届けていた平成という時代のはじまり。ぜひ令和の時代も、平成初期のようなシャレの通じる世の中であってもらいたい。
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