■発表時にはMCを考える
こうして発表会を迎えるのだが、華やかなイメージの発表会だが、CEはすでに2~3年後の計画を考え始めている時期。この段階では、まだ市場の反響、市場からの改良要望といったものは上がっていないが、それでも限られた開発期間のなかで「やりきれなかった」ことはあり、MC時にそれを盛り込むための計画を立てたり、先行開発部門の新技術をリサーチしたりと、けっこう忙しい。
もちろん、この後にあがってくる市場の声を拾い集めてMCに盛り込むことも重要な仕事となる。ただ、メーカーによっては、この段階で人事異動があり、MCは別のCEに委ねられる場合もある。その場合、ここまで携わったCEは別のモデルの開発を担当することになるし、あるいは別モデルのMC担当となる場合もある。
この発表会の日まで、一番最初の経営方針会議から5~6年、正式なプロジェクトゴーから起算して3~4年というのが新車開発期間となる。
■クルマの作り方一問一答Q&A
クルマができるまでの疑問点を一問一答、Q&Aで明らかにしていこう。
Q:エンジンを新開発する際の開発費用と期間は!?
A:エンジン、トランスミッションといったドライブトレインを新規に開発する場合、先行開発部門での開発期間も含めて6~7年というのが一般的。開発にかかる費用は200億~300億円。ただし、エンジンやトランスミッションは複数の車種に搭載することを前提に、また、長期間にわたり改良を繰り返しながら長く使用されるので、開発にかかる費用はプロジェクト中の1車種が負担するというものではない。
ちなみに、息の長いエンジンとしては、日産のL型エンジンは1965年に初めて世に出て’85年にR31スカイラインがRB型エンジンを搭載するまで20年にわたり日産の主力エンジンとして豊富な排気量バリエーションを持つなど、幅広く搭載されたエンジンとして有名。
Q:コンピュータによるシミュレーションが進化して、実車テストがほとんど必要なくなってきたと言うけれど、実際は!?
A:ボディ剛性や耐久性などについては、現在ではほぼシミュレーションで正確な設計ができるようになったため、圧倒的に開発期間が短縮した。塗装の耐久性やシート地のスレやヨレに対する耐性などもデータが豊富なため、テスト時間は以前より短くなっているという。
しかし、電子制御デバイスが多く使われるようになり、この制御フィーリングについては、人間の感性評価を重視しないと違和感のある乗り味になってしまうため、いまはこの部分の実車テストに時間をかけている。
Q:ヒット車の開発を担当したCEはいいですが、不運にも不人気車を担当したCEはどうなる!?
A:自動車メーカーはビジネスなので、仕事に対する達成目標がある。かけた予算に対し採算が合わず、赤字を出すことになれば、当然だがチーフエンジニアとしての職を解かれることもある。
トヨタではクラウンのCEを無事務め上げると、次は役員に昇進するのが通例。初代プリウスのCEを務めた内山田氏は現在会長職にある。ヒット車のCEは文字どおり勝ち組となる。


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