2014年。目下、スズキハスラーの爆発的ヒットが明るい話題の軽自動車界。とはいえ、軽の世界にも果敢なチャレンジをして敗れ去っていった猛者たちがいた。ハスラーに「なれなかった」敗れしクルマたちの姿を追う。(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:御堀直嗣
■スズキ Keiはなぜ一世代で消え去ったのか
人気絶頂のスズキハスラーの新車発表会で、「かつてのKeiのような軽が、今はないね」ということから生まれたと、開発秘話が語られた。
その、Keiはなぜ一世代で消え去ったのだろう?
いわゆる軽の2BOX乗用車と、SUVの中間的な、今でいうクロスオーバー的存在として登場したKei。
だが、運転すると車高がやや上がった感覚はあまり伝わらず、違いを感じにくかったのは事実。あえて、違和感を持たせないようにしたのかもしれないが、外観も車高がやや高いという以外、普通の2BOXと同じ雰囲気に見えた。
ワゴンRで、広くて便利という、わかりやすい特徴が浸透したなかで、Keiはわかりにくさがあっただろう。
とはいえ、スズキからハイトワゴンとは別の新たな価値を軽に見出そうとした意気込みを、当時充分に感じたのは事実だ。
■ダイハツとスズキ、戦略車で雌雄を決しようとしたが……
Keiと時を同じくして、対抗馬として登場するのが、ダイハツのテリオスキッドだ。
当時からダイハツとスズキは、ムーヴとワゴンRというハイトワゴンで雌雄を決していた。
そして両社とも、次なる戦略車としてダイハツはテリオスキッド、スズキはKeiを出してきたといえる。軽でトップを競う両社は、常に新たな分野の開拓に神経をとがらせている。
テリオスキッドは、軽で唯一の5ドアSUVとして誕生。だが、登録車のテリオスの縮小版に見えてしまうあたりに、軽自動車ならではという存在意義が見出しにくかったかもしれない。
テリオスを買えないからテリオスキッドにしたと、人に見られることをユーザーは想像以上に気にするものだ。そこに、読み違いがあったかもしれない。
続いて、ダイハツからはネイキッドが登場する。
ネイキッドは、モーターショーで参考出品された後、その反響を後ろ盾に攻めのデザインをとり入れ、市販化。デザインは今でも古さを感じさせない。また、バンパーやグリルはネジで脱着可能で、プラモデルを組み立てる遊び感覚を実車で楽しませてくれた。
しかしながら、ネイキッド(裸)という車名のとおり、あまりにも中身をむき出しにしたような姿によって、遊び道具すぎる見栄えで、日常で乗るクルマとしては意識されにくかったのではないか。そこが、拡販には結びつかなかった。
■どこかに登録車の縮小版的な雰囲気があったR2&R1
2003年にR2、その後2年後にR1と、スバルは単なる実用車としての軽から一線を画する独自性を追求してきた。ハイトワゴンで後れをとっていたスバルが、かつての360やR2といった名車を現代に蘇らせ、新分野へ挑戦したのだ。
しかし、例えばスバル360のように軽規格を生かした斬新な技術やパッケージングは見られず、どこかに登録車の縮小版的な雰囲気が残っていた。
軽なのに4気筒エンジンにこだわった上質さは、軽のスペシャルティカーを実感させたけれど、いっぽうで、スバル360を彷彿とさせるような革新性に欠けたのではないか。
三菱iは、ダイムラーとの関係のなかで、次世代のスマートなども視野に入れ、リアミドシップの後輪駆動技術と独創のデザインを持ち込んで登場し、話題を呼んだ。
が、やがてデザインの好き嫌いがハッキリする傾向になっていく。
とはいえ、i-MiEVというEVを生み出せた成果は大きい。
また、そのEVは、プジョーで「iOn」として販売され、iのデザインがフランス人に受け入れられた証ともなり、少しは溜飲を下げることができたのではないか。
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