ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2013年9月の企画「クルマの微妙な違いをテストで実証」より、「前後重量配分がクルマの走りをどれだけ変えるのか?」をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2013年9月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:鈴木直也
■前後重量配分がクルマの走りをどれだけ変えるのか?
クルマのトランクに160kgの重りを積んでジムカーナをやったら……。皆さんどんなことを想像しますか?
加速がトロくなる。こりゃ間違いなく生じる変化だ。今回のジムカーナコースでも、スタートから最初のパイロンまでの加速感は明らかに低下。すごくモッサリしてしまう。
続くスラローム。リアにすごい重量が乗っかってるから、切り返しのたびに大きく振られる。そのぶん、慎重かつスムーズなステア操作に撤しないと、パイロンをハネそうになる。ここまでは誰もが予想するとおりの挙動といっていい。
ところが、意外だったのがそのあとの高速左コーナーだ。
頭の中で考えていたのは、リアに積んだ160kgが遠心力で持っていかれて大オーバーになるというイメージだったのだが、実際には後輪にかかる荷重が増えたことでコーナリングフォースが増加。むしろ空荷よりアンダー傾向が強くなったのだ!

実際に運転していてこれにはちょっとビックリ。リアがスライドすることを前提にコーナリングラインを決めていたので、その後の処理でドタバタしちゃいましたよ。
というわけで、ちょっと想定外のラインを通ってフィニッシュしたわけだが、計測されたタイムを見てもう一度ビックリ。29秒22という数字は「とっ散らからなきゃ28秒台に楽に入ったじゃん」という、まぁまぁの好タイムなのだ。
●ジムカーナタイム…ノーマル=28秒50/ウェイト160kg=29秒22
これも、おそらくはトラクション効果なんだよね。
リアに積んだ160kgの重りが後輪の接地荷重を増やしたおかげで予想とは逆のアンダーが出たわけだけど、同時に後輪にはより大きなエンジントルクを吸収する余裕も生じている。
これまでスライドして逃げちゃっていたエンジントルクが、クルマを前に進める力としてタイヤから路面に伝わるようになり、パワー・ウェイト比の悪化をカバーしているのだ。
■直也’sCHECK!
オーバーハング部に重たいウェイトを積むのだから、コーナーリングでは激しいイナーシャで降り出されるのかと思っていたら、意外にもリアタイヤに荷重がかかってトラクションがガッチリと出た。案外悪くない印象だ。
■86のコーナーウェイトを計測する
ウェイトを積まない状態での各輪荷重は右前=356.0kg、左前=338.0kg、右後=269.0kg、左後=280.5kgで総重量=1243.5kgだった。
●後席足下にウェイト(40kg)を搭載した場合
リアシートのあたりに40kg程度載せても、実際のところコーナーウェイトに大きな変化は出ないことがわかる。
●後席足下にウェイト(40kg)を搭載した場合
80kgを搭載するにしても、リアシート部とトランク部ではずいぶんとリアにかかる荷重が変化することが確認できる。
●後席足下にウェイト(160kg)を搭載した場合
トランク160kgではほぼ前後重量配分が50対50になるのに対し、こちらは30~50kgフロントヘビーだ。
●後席足下にウェイト(200kg)を搭載した場合
全体に重たくはなっているものの、前後の重量配分に大きな差は出ていない。やはり重心付近にウェイトを載せているため。
●トランクにウェイト(40kg)を搭載した場合
後輪よりも後ろにウエイトを搭載することで、わずか40kgでもしっかりとリア荷重が増えていることがわかる。
●トランクにウェイト(80kg)を搭載した場合
前輪荷重はまったく変わらないいっぽう、後輪荷重は左右それぞれ20kgずつ増えていることがわかる。
●トランクにウェイト(160kg)を搭載した場合
前輪荷重が3kg程度軽くなっているいっぽう、後輪荷重は40kg以上重たくなって、結果、前後輪荷重がほぼ等しくなった。
●トランクにウェイト(200kg)を搭載した場合
後輪荷重は搭載したウェイト重量分増えているが、前輪は相対的に荷重が抜けていることがわかる。後席に荷重をかけた場合の配分とは対照的だ。
























コメント
コメントの使い方これは実地が大変に学びになるので一回、個人それぞれで試してみるべきことですね。
私も仕事道具積んで、いろいろ試しました。FRは勿論ですが、四駆でも意外なほど大きく特性変わります