あなたは送りハンドル?もしくはクロスハンドル?――ハンドルの回し方に正解なんてあるの?と思ってはいないだろうか。
正しいハンドル操作は、上手な運転操作につながるだけでなく、危機回避にも役立つ、極めて重要な技術なのだ。
筆者の古巣である自動車メーカーでは、送りハンドルが正解とされており、運転訓練ではそのように教育されてきた。
一方で、自動車教習所ではクロスハンドルで教えられ、また、送りハンドルはダメという意見を耳にすることもある。
果たして送りハンドルとクロスハンドル、どちらがいいのだろうか。
文:吉川賢一
写真:平野学、池之平昌信、ベストカー編集部
動画:沼田自動車学校YouTube公式チャンネル
送りハンドルとは?
送りハンドルとは、例えば、右折をする際、9時15分の位置でハンドルを握ったまま、回すハンドル操作のことである。
操舵角が足りなければ、右手の力を抜いてハンドルの周上を滑らせ、左手のすぐ右側を掴みなおすようにする。腕が交差することがなくハンドル操作ができる。
送りハンドルは、ハンドルから手を離さずに操作できるため、安全な操作だといえるが、ハンドルを回すのに多少時間がかかり、素早く回したいとき、
また、大きく曲がりたいときなどには、運転に慣れていない初心者ドライバーには、少し難しいハンドル操作かもしれない。
送りハンドルはダメと言われる理由はここにあると考えられる。
クロスハンドルとは?
教習所で教わるハンドル操作の基本型がクロスハンドルだ。
右折のシーンでは、9時15分の位置で握ったままハンドルを右へと切り始め、左手が12時を過ぎたら、右手を9時の位置に持ち替える。
クロスハンドルは、短い時間でたくさん回せることがメリットではあるが、僅かではあるがハンドルを片手で握る時間があり、ハンドルに急なキックバック(※1)があった場合には、咄嗟の対応がしにくいなどのデメリットがある。
※1 キックバック…路面の影響でハンドルが回される現象
結局どっちが正解?
これに関しては、筆者は基本的には送りハンドルのほうがベターだと考えている。
しかし、賛否両論、まるで流派のようにいろんな議論があり、また、速度や横Gなど、その時の状況によっても変わってくるため、どこをどういったスピードで走るのか、前提条件が無ければ判断はできない。

日本の教習所ではクロスハンドルで教えてくれることが多いそうだが、海外では送りハンドルが基本として教えられている国もある。
回し方にはいろんな議論があるものの、ハンドル操作についての意見の多くに共通しているのはハンドルは、回すのではなく、押し上げるように回すということである。
例えば、送りハンドルで右に曲がる場合、左手をメインに使い、ハンドルを上に押すことを意識する。
この方が、ハンドル操作が安定するのだ。右手でハンドルを引く方向に力が入ると、シートバックから背中が浮いてしまうため、操作が安定せずにハンドルを切りすぎてしまい、安定しない。
シートバックに背中を押し付けるように、左手で操作をするのだ。
これはだめ!うち掛け(逆手)ハンドルと片手運転
昔はタクシー運転手の方などによく見られた、うち掛けハンドル(※2)。
パワーステアリングが普及していなかった時代に重いハンドルを回すために身についた操作なのであろう。今でも使っている人を見かけることがある。
しかし、ハンドルを内側からがしっと握って回していくこのうち掛けハンドルはハンドル操作が安定しないため危険であり、それだけでなく、キックバックを受けた時に、とっさにハンドルから手を離すことができず、手首を痛める可能性もある。
※2 うち掛けハンドル …トラックやバスなどの大きくて寝ているステアリングを回すときに、遠くに手が届かなかったから始まったといううわさもある。
まとめ
同じような議論にブレーキング時の右足、踵をつけるつけないもある。
これも教習所では、踵を付けないでブレーキを踏むと教えられるが、右足は踵を軸にして、アクセルとブレーキを踏みかえるものと認識している方が多いであろう。
運転が上手い人のクルマに乗っていると、横G変動が少なくてなめらかに進んでいくと感じないだろうか。

実は、一瞬でも片手操作になるクロスハンドルでの操作では、この滑らかに進むようなハンドル操作が、非常にやりにくい。
送りハンドルはほかにも、しっかりとハンドルを支えているおかげで外乱による挙動の乱れが少ない、など、クロスハンドルに比べてメリットが盛りだくさんなのだ。
より運転上級者を目指すならば、送りハンドルを習得されることをおすすめする。