近年の交通事故件数は減少傾向にあるにもかかわらず、任意保険の保険料は上がり続けているのです。そこで、保険料の上昇は避けられないものなのか、値上げの背景を整理しながら、契約者にできる対策を考えていきます。
文:佐々木 亘/画像:Adobestock(トップ写真=izzuan@Adobestock)
【画像ギャラリー】自動車保険の見直しも検討した方いいかもしれない……(3枚)画像ギャラリー軽自動車にも料率クラス導入! 値上げは止まらない?
これまで軽自動車には、型式ごとの「料率クラス」が設定されていなかったのですが、修理コスト増や損害額の上昇が顕著に現れていることから2025年1月から型式別の料率クラス(1~7区分)が導入されました。これにより事故率の高い車種や修理コストのかかる車種は、保険料の上昇が見込まれます。
軽自動車の人気は依然として高いままで、登録台数は年々増え続けており、事故の発生件数も増えました。特に都市部では軽自動車の利用が増えたことで、小さな事故(物損事故・自損等)の件数が多くなっているのです。
型式別料率クラスが高めなのは、スペーシアやデリカミニ、デイズといった軽ハイトワゴン。いずれも人気が高く、保有台数が増えている車種です。これらの車種は、車両料率クラスが4〜5、対人・対物の料率クラスが高いものでは6となっています。
不正請求撲滅は保険会社と契約者の信頼関係が不可欠
昨今の保険料値上げは、必ずしも事故の増加や修理費の増大が理由とは限らないことをご存じでしょうか。
最近の保険料アップの要因には、不正請求対策が含まれているのです。契約者からすれば「不正をするのは一部なのに、なぜ全体で負担しなければならないのか?」という憤りが湧いてくるのも自然な反応でしょう。
自動車保険の不正請求とは一体何なのか。記憶に新しいところでは、ビッグモーターによる自作自演の損害請求や水増し請求といったものがありました。
不正請求には、修理工場や中古車販売業者などが関与するケースが多く報告されています。損害保険会社の社員からは「修理費の不正請求はビッグモーターに限らず、大手のディーラーでも日常的にある」との声も上がっているのです。
不正請求対策には、データ分析による不正検知の強化やAIの導入、調査の厳格化と審査プロセスの強化、保険金の支払い基準の見直しといったコストが発生します。
これを保険会社は「全体のコスト増加による影響」としてまとめていますが、一般契約者にとっては、ほとんど関係のないところでのコスト増なのです。
こうした理不尽な値上げに対し、契約者としてできることは、保険料値上げの理由を正しく理解し、納得できる会社を選ぶことに他なりません。保険会社の大小ではなく、中身(誠実な対応と納得できる説明)で判断することが、これからは重要になっていきます。
保険会社ファーストの体制に喝を入れろ!
最近の自動車保険の値上げは「契約者ファースト」ではなく「保険会社ファースト」で動いている証。
修理工場や代理店の不正請求が原因なら、保険会社は自前で監視体制を強化し、不正を防ぐ仕組みをつくるべきなのです。契約件数や売り上げ確保のために、のべつ幕無しに取引を広げ続けるのも、時代錯誤のやり方と認識すべきでしょう。
このように契約者を蔑ろにする保険会社には、契約者の手で喝を入れることが重要です。つまりは値上げの理由について説明が無く、情報公開も行わない保険会社とは「契約しない」ことが、私たちにできる最大の抗議になります。
そもそも保険契約には、定期的なやりとりを繰り返し行いながら築かれる信頼関係が根底にあることを、今の保険会社は忘れてしまったのでしょうか。ここをおろそかにする保険会社とはスパっと手を切り、親身になってくれる新たな保険会社を探すべきです。
昨今の動きを見ていると、大手だから安心という感覚が、自動車保険において失われています。ひところは安心できないと敬遠されていたネット型自動車保険は、顧客満足度を高めながら実力をつけてきているのです。
今こそ保険の見直し、並びに保険会社の再検討を行う時。数多ある保険会社から、信頼できる会社を探すことが、令和の自動車保険との付き合い方です。
コメント
コメントの使い方損害保険料率算出機構で算出したものを基礎に保険料を計算していることを、このコラムを書いた人は知っているのでしょうか。