BEVモデルのメカニズムや技術的な話となると、バッテリーが注目されがちだが、「ギガキャスト」も開発のトレンドワードとなっていることを忘れてはいけない。一体ギガキャストとはどんなものなのか?BEVモデルにおいて取り上げられることが多い理由とは?ギガキャストについて改めて簡単に紹介しよう。
文:西川 昇吾/画像:テスラ、トヨタ
【画像ギャラリー】なんで今「ギガキャスト」が話題となっているの?(21枚)画像ギャラリーフロアのボディ構造を集約
ギガキャストは簡単に言ってしまえば、クルマのフロア周りのボディ構造を1つの鋳造部品に変更したものだ。このギガキャストはテスラが採用したのがキッカケとなり、そこからBEVモデルを製造・開発する自動車メーカー複数が現在開発に着手している。素材はアルミとなっている。
2023年のジャパンモビリティショーのレクサスブースでも、開発中のギガキャストが展示されていた。クルマ造りの考えからすると「異端児」と扱われることの多いテスラだが、しっかりと伝統の自動車メーカーに与えている部分もあるのだ。
ギガキャストのメリットは?
メリットがあるから各メーカーがギガキャストに取り組んでいるのだが、そのメリットを見ていこう。まず、部品点数がかなり少なくなることがメリットだ。例えば2023年のジャパンモビリティショーで展示されていたレクサスのギガキャストは、86個の鉄部品が1つのアルミ鋳造物に置き換えられることとなる。
こうなると生産コストや生産時間が削減されるため、より効率的な生産が可能となる。また鉄で構成されている部分がアルミへと置き換わるので、軽量になるのも大きなメリットだ。BEVはバッテリーがどうしても重たいため、車体側での軽量化は開発時に重要なポイントとなる。
鉄からアルミへと置き換わることで、剛性面を心配する声もあるかもしれないが、複数の部品を溶接や締結していたこれまでの手法と異なり、1つの大きな構造体となるので剛性はむしろ向上するのだ。
また、サスペンション周りの設計の自由度も向上するため、同じプラットホームを採用しながら、バリエーションの豊富な車種を設計することも可能となるそうだ。そのような背景を考えると開発コストも抑えることが出来るだろう。
まだまだ課題もある
もちろん、ギガキャストを開発する上での課題もある。これまで複数の部品で構成されていた部分を1つの鋳造物にするわけだから、寸法の精度を高める必要がある。これには高い生産技術が必要となるのだ。
もう1つは衝突安全に関してだ。事故などで大きな衝撃が入った際に、アルミを変形させたり歪ませたりさせながら衝撃を吸収する必要がある。つまり座屈をさせながら衝撃を吸収することが求められるのだが、この座屈のタイミングなどを設計でコントロールして、衝突安全基準などの合わせるのが難しいそうだ。
今後のBEVの1つのキーとなる技術であるギガキャスト。その開発競争は始まったばかりだが、BEVモデルの「走りの良さ」を左右する大事なポイントとなることは間違いない。今後のBEVはバッテリーだけではなく、ギガキャストを含めた車体の構造にもより注目だ。
コメント
コメントの使い方事故等でフレームが変形した状態をもとに戻す事が難しいのもデメリットの一つです。
アルミフレームを修正し元の形状に戻せない場合はフレーム交換しか対処法が無いため、事故=廃車になる可能性が高いのもデメリットの一つだと思います。
テスラのギガキャストは、日本や欧州のような積年の板金技術を持っていない為の苦肉の策。
デメリットである制度の足りなさによって、納車直後に不具合出たり(なのに強引に保証対象外にされる)、ボディパネルが外れやすくなったり、水たまりやギャップを超えただけでドアの開閉がし辛くなったりと、多数の問題点の温床になってる。
トヨタがそういう面を解消したうえで出しているのかは、今後判明すること。注目