今になって始まった話ではないが、海外市場での日本車の値段が高騰を続けている。と言っても新車価格のことではない。少し前の国産スポーツモデルが特に有名だが、高騰しているのはそれらだけではない。日本が誇る宝が世界的に評価され、世界の宝となっている現状は日本人として誇らしいものの、日本のクルマ好きのクルマ選びに悪影響を及ぼしている部分も大きい。高騰の理由をあらためて見直してみたい。
文:奥津匡倫(Team Gori)/写真:トヨタ、ホンダ、日産自動車
【画像ギャラリー】日本の文化から世界の文化へ……人気の国産絶版スポーツ(3枚)画像ギャラリー需要があるのはわかるけど何でこんなに高くなる!?
値段が上がる=需要に対して供給量が十分にないから、というのが基本原則ではあるものの、この先、生産終了したモデルの数は減っていく一方。だから値段が上がるというのはわかる。しかし、ある程度時間の経ったモデルを欲しがるなんて、かつての感覚では“好きな人”くらいのものだったはず。それがいつまでも需要が発生し続けるのはどうしてなのか。それも、日本でだけ販売された国内専用モデルまでそうなのだから不思議に感じる。
日本のアニメや漫画、映画「ワイルドスピード」シリーズの影響、そして世界的なドリフト人気が国産スポーツの人気と流通価格を押し上げた要因だが、とりわけ無視できないのがゲーム、「グランツーリスモ」の影響。97年の発売以降、シリーズを重ねながら世界中で人気を集めているが、そこに登場する“見知らぬ高性能車”に興味を抱いたという人がずいぶんいるようなのだ。
R34までのスカイライン(GT-R)など、基本的に日本国内だけで販売されたモデルにまで海外人気が広がっている理由はここにも要因がありそうだ。
厄介なアメリカの「25年ルール」の影響
そこに非常に厄介な影響を及ぼすのがアメリカの「25年ルール」だ。アメリカは右ハンドルのクルマの輸入、販売、登録はできないが、製造から25年以上経過したものについてはクラシックカーとして登録が可能になるため、右ハンドルでもそのまま輸入、販売が可能になる。
ついでに排ガス規制や関税も対象外となることから、何の障害もなくそのままの形で輸入、販売、登録ができるようになるというルールだ。
その“輸入解禁”ルールがさらに価格を吊り上げる。現在、1000万円未満で買うことはできないR32 GT-Rも、価格が急上昇を始めたのは25年ルールの適応対象となった2014年から。
価格が暴騰し始めると、いろいろな意味で注目を集めるようになり、投機目的で買う人が増えるなど、R34GT-Rをはじめ、国産スポーツの値段を大きく押し上げる一因となってしまった部分は否めない。迷惑な話である。
まだ買えるクルマまで値段が上がっているのはなぜ?
もう手に入らないモデルならまだわかる。しかし、新車で買えるクルマまで価格が上昇しているのはどういう理由なのか。日本市場向けに関しては、供給量が需要に対して不足していることが原因だが、海外市場では事情が違うところもあるようだ。わかりやすい例としてランドクルーザーをあげるが、その走破性とステータス性から環境が厳しい国での人気がとりわけ高い。
ハードな使い方に耐えうることから“ランクルじゃなくちゃ”という国や人、組織も多い。しかし、そうした国々ではもともとの価格が日本で買うよりも大幅に高いことが多く、さらに十分な供給量がなかったり、所得水準から新車の購入が難しかったりなどで、中古車のニーズが高い。
そのため、事故車や過走行など日本では敬遠されるようなものでも、あり得ない値付けで買っていく海外バイヤーも少なくないと聞く。そうした現状が日本の中古車相場まで吊り上げてしまうのだ。
余談になるが、そうした国々の市場で重要なのは“日本から来たランクルであること”。それ以外は重視されないこともあるためか、盗難車が輸出されるケースも珍しくないという。「価格高騰」と「盗難されやすい」は=でもある。
世界的に人気のモデルに乗っている人は、盗難対策をしっかり心掛ける必要があることを、あらためてお伝えしておく。







コメント
コメントの使い方日本人でも、お金ある人は趣味枠で保管してますよ。
でも日本単独より世界全体での方が、当然だけどずっと金持ち多いから、そこで分け合うとどうしたって海外に多く出ていく。
その自然な流れを止めたいなら自分で稼いで確保するしかないってのが悔しい現実なんですよね