2025年2月20日、スズキは2021年〜2025年度までの中期経営計画の売上・利益目標を前倒しで達成したことを受け、2025年〜2030年度の新・中期経営計画を発表した。鈴木俊宏社長のもと、スズキが描く未来の景色とは!?
※本稿は2025年3月のものです
文:鈴木直也/写真:中里慎一郎、スズキ
初出:『ベストカー』2025年4月10日号
カリスマの経営理念をアップデートして受け継ぐ
2025年2月20日行われた、スズキの新中期経営計画発表会、ぼくは鈴木俊宏社長のスピーチに注目していた。
鈴木俊宏社長は10年前から社長の座に就任しており、経営的にはバトンタッチが完了していたのだが、メディア的には“名物会長”として健在だった鈴木修さんにどうしても注目しがち。前任者のキャラがあれだけ強烈だと、あとを受け継ぐ人は大変だ。
今回の発表でも冒頭に「2021年6月25日の第155回定時株主総会を機に、鈴木修元会長の体制から、鈴木俊宏社長を中心とした集団指導体制へと移行しました」と、わざわざことわりを入れているように、カリスマ経営者の属人的な経営理念を、アップデートして受け継ぐという基本方針を示している。
経営計画でキモとなっているのは、現在5.4兆円の売上高を、2031年には8兆円まで伸ばすという成長戦略で、そのためには4輪の世界販売台数を、現在の316万台から420万台まで伸ばす必要がある。
ぼくらにとって気になるのは、言うまでもなく日本市場の商品計画だが、いよいよスズキも電動化に舵を切るという決意が注目される。
具体的には2025年度中のeVITARAと軽商用BEVの投入を皮切りに、2030年までにBEVを6モデル展開してBEV比率20%を達成し、しかも残る80%はすべてHEVとして、広義の電動化比率100%を目指すという計画。
成熟市場といわれている日本だが、スズキにとって日本は成長市場ととらえ、収益の柱に育てるための積極策が講じられている。
そのほか、インドを中核とするグローバル市場については詳細に解説するスペースはないが、ざっくり評価して「トヨタに匹敵するくらい危なげないし、実現可能性も高いしっかりした計画」という印象。
社風として、スズキはハッタリをカマさない会社だけれど、高いコスト競争力を武器に堅実な中期計画を策定していると評価したい。
ついでに、ぼくが秘かに楽しみにしていた質疑応答だが、鈴木俊宏社長の対応はカリスマ前任者に負けず劣らず頼もしいものだった。
思いつくままにピックアップすると、「インセンティブで作られた市場は今後成り立たない」「お客さんが欲しがらないものは革新でも先進でもない」「電池なんてデファクトが決まってから吊るしを買えばいいのでは?(超意訳)」「オサム会長はいい教師であり、また反面教師でもありました」などなど。
長時間の会見をただ一人で演じきった鈴木俊宏社長の力量は相当なもの。「スズキの記者会見は面白い!」という伝統はしっかり受け継がれたといえますね。
●スズキ新中期経営計画の主なポイント
・2030年代前半に営業利益率10.0%以上、ROE 15.0%以上の実現を目指す
・2030年度の売上収益8兆円、営業利益8000億円(営業利益率10.0%)、ROE 13.0%の達成を目指し、目標を設定
・2031年3月期における四輪販売目標420万台、営業利益目標7000億円
・日本市場においてはHEVの強化(スーパーエネチャージ投入)。
※2025年度中にBEV2車種、2030年度までにBEV6車種投入
(ROE:自己資本に対し、どれだけ利益を上げているかを示す財務指標)






















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