台湾市場では日本車が人気だ。トヨタとレクサスを合わせると3台に1台となる33.5%のシェアを誇る。しかし、1990年代は日産、三菱が強く、トヨタはその牙城を崩せなかった。トヨタはどうやって現在のシェアを獲得できたのか?
※本稿は2025年4月のものです
文:ベストカー編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
台湾における日本車のシェア
台湾の自動車のマーケットは45万8000台ほど。トヨタとレクサスを販売する和泰(ほうたい)汽車が15万3000台を販売し、そのシェアはトヨタ27.3%、レクサス6.2%、合わせて33.5%にもなる。
2位は三菱系の中華汽車(三菱、CMC、MG)で11.2%、3位が台湾ホンダの5.9%、1980年代から1990年代にかけて日産の黄金期を作った裕隆(ゆうろん)日産は4.2%にまでシェアを落としている。
台湾では和泰汽車が総代理店としてトヨタやレクサスのクルマを販売しており、トヨタと和泰汽車が出資する國瑞(こくずい)汽車がトヨタ車の多くを生産している。関税がかからないため、価格は競争力のあるものになる。
さらに日本にはラインナップされていないRAV4似のヤリスクロスやカローラクロスGRスポーツ、アルティス(カローラ)GRスポーツといった独自企画のモデルを投入し、人気となっている。
ちなみに台湾で一番売れているクルマはカローラクロスで、2024年は3万3788台も売れた。価格は約360万円からとなっている。
一方でモータースポーツはまだまだこれからというが、スポーツモデルへの憧れは強く、GRスープラ、GRヤリス、GR86が販売され、アルティスとカローラクロスのGRスポーツの人気が高まっていてトヨタ車全体の8%にも上る。
かつてトヨタが三菱を逆転し、シェアでトップに立ったのが2003年。その頃2001年からトヨタ自動車でアジア本部の本部長を務めていたのが豊田章男会長だ。台湾でどんな種まきをしたのか、聞いてみた。
「台湾では商品の強化にこだわりました。最新モデルのウィッシュやヴィオス(ベルタ)を発売し、台湾の事情にあった扱いやすさや新鮮さをアピールしました。ヴィオスとカローラ、カムリをちょうどBMWの3と5と7のように3兄弟として売り出したりもしました。
ウィッシュはアジアマーケットを考えたモデルで、今でもタクシーとして街中を走っています。当時から和泰はマーケティングのセンスがあって、ビルや電車にラッピング広告をして注目度を高めてくれました。いろいろな工夫をすることで、シェアを獲れるようになっていきました。
もうひとつ、当時の台湾のスタッフの父母は日本語がわかる世代ですから、トヨタのメンバーが現場に来た時にコミュニケーションに苦労するということがあまりなかったことも大きかったと思います」
45歳でアジア本部長になった豊田章男会長は、地域の事情に合わせ「町いちばん」を意識しながら、商品力で台湾での販売を伸ばしてきたことがうかがえる。
レクサスにも独自のNX200を販売
和泰汽車の社長、蘇純興(ジャスティン・スー)さんは、日本のトヨタで2年間、経営手法を学んでいる。TPSやムダの排除、社員教育や福利厚生のあり方など学んだことは多い。
彼は1997年に、レクサスブランドを台湾に持ち込む決断をした。レクサスブランド単独で販売した国としてはアメリカに次ぐ2番目であった。
そのレクサスは高級車が人気の台湾にあって急成長を遂げ、2024年の販売台数でNXは1万2474台も売れ、新車販売ランキングでは6位となっている。こちらもエントリーモデルとして台湾独自仕様となるNX200(2L・NA)をラインナップし、人気となっている。
台北にある松山(そんしゃん)空港近くに「レクサススカイライン」という整備・点検センターを持ち、オーナーたちが、自由にコーヒーやクッキーを楽しみながら愛車の整備を待つことができる。しかも、窓からは空港が一望でき、そのおもてなしは日本のレクサス以上かもしれない。
ジャスティンさんもまた「町いちばん」という意味をよく理解している経営者といえるだろう。
日本のトヨタに頼るだけでなく商品もサービスも台湾のニーズに合わせたものを提供することで圧倒的なシェアを手にしている。
















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