みなさんは味わったことがあるだろうか? 新しいモノを買って喜んでいるその時に「自分が買ったものに負けないほど良い別のモノ」を見つけてしまったショックを。シビックRSを味わってしまったテリーさんがまさにそれなのだ!!
※本稿は2025年4月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、ホンダ
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
素晴らしいクルマだが……知りたくなかった!?
実は最近、ホンダのフリードクロスターを購入した。
本当は、よりシンプルなデザインのフリードがよかったのだが、2列シートはクロスターしかなく、そちらを購入。室内は広いし便利だし、最高である。
普段はマニアックな中古車ばかり買っているが、久しぶりの新車はやはり快適。トラブルの心配をすることなく使えるのは、とても心が安らぐ。
私のようなクルマ変態にとって安心、快適な国産新車は砂漠の中のオアシスのようなもの。いい買い物をしたなぁ! と喜んでいるわけだが、今回の取材でシビックRSに乗って、少し心がザワついている。
RSは11代目シビックに追加設定されたスポーツグレードだが、これが素晴らしくよかったのだ! フリードクロスターを買う前に試乗していれば、私はシビックを買っていたかもしれない。
そもそも納車した直後だしフリードもいいクルマだけに、さすがに買い替えるのは現実的な話ではない。しかし、少し真剣にそう思うくらいにシビックRSは素晴らしかったのだ。
おそらく、走り出した瞬間に「こんなにいいの!?」と叫んだと思う(編註:そのとおりです)。軽快だしスポーティなのだが、気負いすぎていないのがいい。
シビックタイプRが凄いクルマであることはわかっているが、力が入りすぎている感じや仰々しさが苦手な私にとって、タイプRよりもRSが理想のスポーツカーなのかもしれない。
車重は1350kgで、特別軽いわけでもない。だが、1.5Lターボエンジンの回り方が軽快だからなのか、とても軽く感じる。
6MTのクラッチも軽く、シフトを駆使して走るのがとても楽しい。そう、走らせていて「楽しい」以外の言葉が出てこないくらいなのだ。走りが意外と上質であることも報告しておくべき美点だが、何よりも「楽しさ」がこのクルマの最大の特長である。
ただ、改めて乗ってみるとシビックも「クラスが上がったな」と思う。ボディサイズも大きくなったし、価格も高くなった。
私たちの世代にとって、シビックと言えば文字どおり「市民のクルマ」、大衆車のイメージだったが、今は上級移行して昔のアコードのポジションにいるように思える。RSの価格は439万8900円。端的に言って、高い。
トヨタには作れないクルマ
この価格の高さはどうにかしてほしいものだが、もともと現行シビックは好きなクルマだったのだ。2021年の年末に当連載でマイナーチェンジ前のシビックEXに乗った時も凄くいいクルマだと書いた。
水平基調の内外装の趣味のよさと、特別ではないが「普通によく走る」ところが気に入っていたのだが、以前のEXがCVTだったのに対し、RSは6MTでスポーティさを増しているのだから、さらに評価が上がるのも当然である。
あの時は「トヨタには作れないクルマ」と記していたが、その思いは今も同じ。やはりシビックはホンダを代表するクルマなのだ。
普段、当連載でいろんなクルマに乗せてもらっているが、走りについて語ることはほとんどない。
普通に走れば充分で、クルマには走行性能よりも大事なことがたくさんあると思っているからだが、時々とんでもなく走って気持ちのいいクルマに出会うと、こうして興奮して報告したくなることがある。このシビックRSはその典型例だ。
シビックRSに乗ると、自分の運転が上手くなったような気がする。「俺でも乗りこなせる」と思わせてくれるクルマなんて最高に決まっているではないか。
やはりシビックは素晴らしい。RSは肩に力を入れすぎることもなく、さりげなくドライバーを楽しませてくれる。
●ホンダ シビックRS 439万8900円(6MT)
11代目シビックのマイナーチェンジで新たに加わったスポーティグレードで、2024年9月登場。
ボディサイズは全長 4560×全幅1800×全高1410mm、ホイールベース2735mmで車重1350kg。182ps/24.5kgmの直4、1.5Lターボエンジンを搭載するFF車。6MT専用グレードで、WLTCモード燃費は15.3km/L。RSは「ロードセーリング」の略である。



















コメント
コメントの使い方日産にもできたように、この値段で良いのならどこでも作れる。
なぜ作らないのかと言えば、根拠となるモータースポーツとも接点薄すぎ、歴史もレガシーもなく、訴求力ないから