モータースポーツの世界などでレコードタイムが記録されたときなどに「冬だからパワーアップしてタイムが出た」といった声を聞くことがある。なぜ冬の方だとエンジンパワーが上がるのか?夏よりも冬の方がタイムを出しやすいのか?その理由を紹介していこう。
文:西川昇吾/画像:Adobestock(トップ写真=JK2507@Adobestock)
【画像ギャラリー】理屈を知るとすんごい納得できるなぁ(3枚)画像ギャラリー寒いと酸素濃度が高くなるのが理由
自動車に使用されているエンジンは空気と燃料を混ぜたものを爆発させて動力源を得ている。学校で習った理科や科学の実験を思い出せばイメージできると思うが、燃焼するには酸素が必要で、酸素をより与えると強く燃焼しただろう。これがエンジンでも起きている。
寒いと空気中の酸素濃度が高くなるから、同じ空気の量でもエンジンパワーは上がるのだ。
ではなぜ寒いと酸素濃度が上がるのか?それは空気の体積が寒いと小さくなるからだ。同じ量の空気をエンジンが吸い込んだとしても、体積が小さい寒い時の方が多くの数の酸素を吸い込むことが出来るのだ。
酸素濃度は標高でも影響している
ちなみに酸素濃度は気温以外にも影響を受けている。それが標高だ。標高が上がると空気が薄くなるというのは多くの人が何となく知っていることだと思うが、空気が薄くなるというのは酸素の量が減ってしまうことを表している。
今ではそのような話は少なくなったが、日本にあるサーキットの中でも標高が高い富士スピードウェイなどでは、専用のエンジンセッティングが与えられていたことも昔は多かった。
そのような条件から言えば標高が低くて、寒い場所が最もパワーが出る場所と言えるだろう。また、冬場は空気が乾燥していて燃焼しやすくなっている。これも冬のパワーアップの理由の1つと言われることもある。
取り込む空気の温度を下げるアプローチ
気温が低いとパワーアップするということを説明してきたが、エンジン内部に取り込む空気の温度を下げようという技術的アプローチはモータースポーツの正解を中心に多く見ることが出来る。
例えばフォーミュラカーなどで見るインダクションポッドだ。ドライバーの頭上から吸い込んだ空気をエンジンへ送り込んでいる訳だが、走行風で冷えた空気を取り込めるし、何よりエンジン本体や駆動系など車体が発する熱源から離れたところから空気を取り込めるから空気が冷えているのだ。
一般的な乗用車の場合、エンジンルーム内部にエアクリーナーがある場合があるのでこうはいかない。
また、ターボ車に装着されたインタークーラーも分かりやすい例だろう。ターボで過給された空気をエンジンに押し込む前に、走行風で冷却させているシステムだ。それだけエンジン内部に取り入れる空気の温度というのは重要なのだ。
もし機会があるならば直線の長いサーキットを、同じクルマで夏と冬それぞれで走ってみるといい。冬場の方が早いポイントでリミッターに当たったり、同じギアで走っていても想定よりも早く吹けきったりするはずだ。温度による違いを実感することが出来る。
「エンジン」の人気記事を見る
コメント
コメントの使い方