近年、増えてきている「走行距離連動型」の自動車保険。年間の走行距離に応じて保険料が変動する仕組みは、今後もさらに普及していくでしょう。ただ、一般的な自動車保険との違いの分かりにくさも気になるところ。そこで今回は、走行距離連動自動車保険で、知っておきたい損益分岐点を考えていきます。
文:佐々木 亘/画像:Adobestock(トップ写真=洋 奥山@Adobestock)
【画像ギャラリー】想定外の外出には要注意!! 十分な知識を蓄えて保険選びをしよう(3枚)画像ギャラリー保険も使った分だけ払う新しい仕組みへ
従来の一律型保険では、クルマの利用頻度が低いドライバーも、高い頻度で運転する人も、ほぼ同じ保険料を負担していました。実際の使用状況とかけ離れた負担の仕組みに対し、「使った分だけ支払う仕組み」へと注目が集まり、走行距離連動型が選択肢として定着し始めたのです。
走行距離連動自動車保険は、車載通信モジュール(DCM)の普及と同時に表舞台へと出てきました。DCMによって車両の走行距離や位置情報などがリアルタイムで取得できるようになり、実際の使用状況に基づいた保険料の算定が簡単になったためです。
自動車保険の本流になりつつある、走行距離連動自動車保険。一体どのくらいの年間走行距離なら、一律負担型の自動車保険よりもお得になるのか、見ていきましょう。
走行距離連動自動車保険の損益分岐点はココ
たとえば、在宅勤務中心で日常的に車を使わない人や、週末の買い物や送迎など限られた場面でのみ運転する人であれば、年間の走行距離は2000〜3000km程度に収まることも珍しくありません。
こうした場合、走行距離連動自動車保険なら、一般的な自動車保険よりも年間保険料が1万円以上安くなることもあります。
一方、通勤や営業で日常的に車を使う人の場合、年間走行距離は1万kmを超えていくでしょう。このようなケースでは、距離連動型よりも従来型の保険の方が有利になることが多いです。
多くの走行距離連動型の自動車保険では、年間走行距離6000km(月換算500㎞)を境に保険料が急激に上がる料金設計になっています。ココをわずかに使いすぎただけで、保険料が割高になる特性を理解しておきましょう。
保険料が定額ではないことにも注意
走行距離連動自動車保険で注意したいのは、実走行距離に応じて保険料が変動する点です。予定より多く走ってしまった時は、想定外の出費へつながる可能性があります。定額で安定した支払いを重視したい人にとっては、この変動リスクが心理的な負担につながるかもしれません。
最近の新型車には、概ねテレマティクスサービスが付帯されており、DCMも標準装備されていることがほとんどです。走行距離との相談になりますが、クルマの買い替えを機に自動車保険の仕組みを変えることが、クルマの維持費を下げることにつながるかもしれません。
正確なデータや数字に基づいた、正しい保険料の計算ができるこの仕組みは、非常に日本人向けのものだと思います。
ただ本音を言えば、年間走行距離が短いドライバーは自ずと事故のリスクが低くなる(事故に遭う確率が低くなる)ため、もう少し従来型の自動車保険との保険料差が大きくなっていても良いのではないかと思うところも。
短い走行距離なら、圧倒的に安いというコストパフォーマンスの高さがあれば、さらに走行距離連動自動車保険の普及は進むはずです。
DCMの集めたデータを保険会社が分析し、保険商品や保険料の計算へと生かしていくことで、自動車保険の商品力もさらに高まるため、走行距離連動自動車保険が広がれば広がるほど、ユーザーメリットは増えていきます。
今後も技術が進化し、さらに個別化された自動車保険が登場してくるはず。難しくなる保険選びを、十分な知識で乗り越えましょう。






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