日本車でも海外のユーザーに向けて開発されているクルマは、一般的には日本で販売されることはなく、一部のコアなマニアが並行輸入という形で日本に入れて登録しているものがある程度となっている。しかし過去には海外向けに開発・生産されたモデルにもかかわらず、正規に日本で販売されていたモデルが存在する。そのひとつが日産クエストだ。
文:小鮒 康一/画像:ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】日本ではあまり売れなかったけど……良いクルマだったんだよなぁ(11枚)画像ギャラリー北米市場向けに開発・生産されていたミニバン
日産クエストは、1992年秋に北米市場で販売がスタートした3列シートミニバンで、フォードとの共同開発によって生み出されたものであり、生産はフォードが担当。
そのため、日産ブランドからクエストとして販売されていたほか、フォードが持つマーキュリーブランドからヴィレジャーとしても販売されている。
そんなクエストはスペース効率に優れる前輪駆動レイアウトを採用しており、搭載されるエンジンはV型6気筒3.0LのVG30E型を採用。トランスミッションはコラム式の4速ATのみとまさにアメリカ向けのミニバンといったものだった。
ボディサイズは全長4835×全幅1870×全高1770mmと大柄で、7人がゆったりと乗ることができるスペースが備わっていたのも特徴となっており、左ハンドル故に右側のみにスライドドアが備わる仕様となっていた。
なぜなかなか売れなかったのか?
このように明らかに北米市場専売で生み出されたクエストだったが、1995年4月に突如、日産車体が輸入元、オーテックジャパン(当時)が販売元となって一部の日産ディーラーで正規販売がなされることになったのである。
これは北米に輸出する車両を積んでいく船が、帰りに空荷で戻ってくるのはもったいないということで、日本市場ではまだあまり馴染みのなかったミニバンであるクエストに白羽の矢が立ったというものだった。
ただ北米市場向けに開発されていたクエストを日本向けに大改修するのはコスト的に見合わないということで、最低限の法規対応のみが実施され、左ハンドルのままでスライドドアも右側だけというほぼそのままのスタイルで販売されていた。
価格もエントリーグレードの「GXE」で348万円と、のちに登場する初代エルグランドが約265万円からだったことを考えれば高額だったこともあり、残念ながら人気車となることは叶わなかった。
結局日本へ正規導入がされたクエストは初代モデルだけだったが、北米では1998年に2代目が、2003年には3台目が登場し、2010年に登場した4代目はE52エルグランドの兄弟車(ただし全幅がワイド化されている)となった。
ただ4代目クエストは2017年に終売となり、現在後継車種は存在していない状態が続いているのは残念だ。












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