長いクルマの歴史のなかには、誰にも気づかれることなく(?)ひっそりと姿を消した装備が存在する。今回はその中でも評価の高かった3つの装備を取り上げ、廃れてしまった理由を探ってみたい。
文:デグナー12(Team Gori)/写真:ホンダ、トヨタ、写真AC
先代ステップワゴンのわくわくゲート
最初に紹介するのは先代ステップワゴンに搭載されていた「わくわくゲート」。
これは通常の縦開きリアゲートに横開きのサブドアを加えた独自機構で、狭い場所での使い勝手が非常に高いバックドアだ。サードシートは左右分割式かつ床下収納が可能で、サブドアからのスムーズな乗降も実現。ユーザーから高い評価を得たが、現行モデルでは惜しくも廃止されてしまった。
その理由として、リアデザインが左右非対称になることへの抵抗感や、バックミラー越しに見えるサブドアの縦ラインの違和感を指摘する声があったが、最大の要因は電動バックドアの普及だろう。
重くて扱いづらかったリアゲートが、ボタンひとつで自動に開閉できるようになった現在、わくわくゲートの利点は徐々に薄れていったと言える。
インダッシュタイプのカーナビ
かつてのカーナビブームを牽引したのが「インダッシュモニター」。エンジン始動やスイッチ操作によってダッシュボードの奥からディスプレイがせり出してくる様子に心躍らせたクルマ好きは多いはずだ。
筆者もそのひとりで、当時はカロッツェリアのサイバーナビを愛用。駐車時は格納してスッキリ、そんなギミックも魅力的な存在だった。
しかし、この装備も7インチを超える大画面のインパネ一体型ディスプレイが台頭してきたことで姿を消していく。
また、インダッシュモニターは可動部が多い分、故障リスクが高く、車両の振動で画面がぶれるなどの使い勝手の悪さもネックに。とはいえ、根強いファンもおり、一部モデルにはこの機構が残っている。
エディックスに採用されたフロント3列シート
最後に紹介するのは、前席に3人座れる「フロント3列シート」。ホンダのエディックスがその代表格で、インパネシフトの採用により、運転席と助手席の間に座席を設け、ハッチバックスタイルながら6人乗りを可能にした。
しかし、この構造には前席と後席のウォークスルーが不可能になるという弱点があった。
さらに、シエンタやフリードなど、コンパクトで使い勝手の良いミニバンの普及も追い打ちをかけ、センター席の存在が邪魔になっていったことは想像に難くない。結果、今やフロント3列シートは、ハイエースやキャラバンの一部グレードに限られてしまった。
利便性、個性、機能性など、光るものを確かに持っていた装備。しかし、ユーザーのニーズや市場のトレンド、技術の進化により、新たなものに置き換えられていくのは避けられない。
そう考えると、今便利だと思っている装備でも、近いうちに姿を消すものがあるかもしれない。それだけトレンドの移り変わりは激しいし、それを実現する開発速度は目覚ましいと言えよう。






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コメントの使い方3×3シート6人乗りは日本車だとティーノが先では……?