2025年5月、トヨタ カローラクロスがマイナーチェンジして登場した。ひと目見てわかるのはフェイスリフトだが、変わったのはもちろんそれだけではない。シャシーや車体のチューニングでより上質に進化した。まさに完熟の味わいだ。
※本稿は2025年7月のものです
文:鈴木直也/写真:奥隅圭之、トヨタ
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
初代カローラから受け継がれる理念
●トヨタ カローラクロスのポイント
・ガソリンエンジン車を廃止してハイブリッドのみとした
・フロントマスクを中心としたエクステリアのリファイン
・サスペンション等の締結剛性のアップによる操安性の向上
・GR SPORTの設定
マイナーチェンジで大幅刷新されたカローラクロス。試乗そのものも楽しかったが、そのあとに実施されたエンジニアとの質疑応答がなかなか興味深い内容だったので、ここではソッチを中心に語ってみたい。
まず驚いたのは、初代カローラで掲げられた「地球人の幸福と福祉のため」のクルマという理念が今日まで連綿と息づいていること。
豊田章男さんは「時代のちょっと先を行く大衆車」と表現しているけど、いずれにせよ「カローラはみんなのクルマ」という認識は微塵も揺らいでいない。
これって、なかなか凄いことですよ。ご多分にもれずカローラも年々サイズが大きくなり価格も上昇しているんだけれど、カローラを作ってる人たちは「みんなのクルマ」というポジションにとどまるため日夜努力を続けている。
まぁ、有利な条件はある。カローラシリーズはグローバル約160万台の大ベストセラーで、うち約半分がカローラクロス。この量産効果はもちろん大きい。
そしてその恵まれた条件をなるべく良品廉価なクルマ作りに振り向ける……。つまり、短期的な利益ではなく長期的な顧客満足度のほうが大事という価値観は、一般的な経営判断というよりもはや哲学といっていい。
5年程度のビジョンすらブレブレの会社が多いなか、1966年の初代カローラ以来ブレずに大衆車の王道を歩み続けているのが、あらためてカローラの凄いところなのだ。
工場からの提案でシャシー性能の改良を実現
だから、今回のマイナーチェンジで実施された改良はきわめてキメ細かいものながら、同時にコストアップにつながらないよう慎重に吟味されている。
象徴的なエピソードとして、サスペンションまわりで採用された締結剛性の向上が挙げられる。
ボクは最初これをボルト材質の変更と思っていたのだが、実際はさにあらず。
工場での締め付けトルクのバラツキを管理して目標トルク値を高めることで実現したものだという。しかもそれは、2025年モデルから生産が移管されるトヨタ自動車東日本の工場チームからの提案だったという。
こんなこと、理念を共有する“チーム”みたいな組織がない限り、ふつうまず起こらないんだけど、なぜかトヨタではそういうエピソードをあちこちで聞くんだよなぁ。
乗り心地がまろやかになり、ステアリングの操舵感/保舵感がよりスムーズで自然なものになるなど、じんわり伝わってくるマイナーチェンジ効果を堪能しつつ、「こういう改良を徹底した低コストで実現するのがカローラの使命でありトヨタの強みなのネ」と、しみじみ感心したカローラクロスの試乗でございました。
●トヨタ カローラクロス Z 主要諸元
・全長×全幅×全高:4455×1825×1620mm
・ホイールベース:2640mm
・車両重量:1400kg
・最低地上高:160mm
・最小回転半径:5.2m
・エンジン:直4 DOHC 1797cc
・最高出力:98ps/5200rpm
・最大トルク:14.5kgm/3600rpm
・モーター出力/トルク:95ps/18.9kgm
・トランスミッション:電気式無段変速機
・WLTCモード燃費:26.4km/L
・サスペンション:F=ストラット R=トーションビーム
・タイヤサイズ:225/50R18
・価格:343万円






















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