ここ数年で一気にその存在が知れ渡り、今では様々な用途で使われている生成AI。その代表格であるChatGPTを使い、盗難車を見つけ出すという驚くような事件がアメリカで発生した。その不思議な事件の詳細をお届けしたい。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部
【画像ギャラリー】これがchatGPTのおかげで戻ってきたランボ!! それにしてもオーナー名前を刻んでいたとは(3枚)画像ギャラリー車両を盗難された2年後に状況が一転する
アメリカ・カリフォルニア州オレンジ郡に住むアンドリュー・ガルシア氏は、2023年12月に愛車のランボルギーニ・ウラカンEVOを盗まれた。
一般的には自動車保険で補償される自動車窃盗は、限られた捜査資源のなか本腰を入れて捜査が行われることもないだろう。
しかし、約2年が経過した2025年8月、まさかの展開が待っていた。ガルシア氏のインスタグラムに見知らぬアカウントから奇妙なメッセージが届いたのだ。
「このクルマを売りましたか?」という一文とともに、複数枚の写真が添付されていた。そこに写っていたのは、紛れもなくガルシア氏の愛車だった。
実はガルシア氏、車のグローブボックスに自分の名刺を入れていたのだ。メッセージの送り主は名刺を見つけ、ほかに取り扱うスーパーカーについて尋ねてきたという。
どうやらガルシア氏をスーパーカーの販売業者だと勘違いしたようだ。通常なら即座に警察に通報してしまうだろうが、ガルシア氏は違った。証拠固めをすべく、添付された写真から愛車の在処の特定を試みたのだ。
独自で場所を特定するのに活用されたChatGPT
冷静に考えてみれば“こんなメッセージが届いた”と警察に伝えたところで、事件の解決には至らないだろう。ガルシア氏が活用したのは最近流行りのAIサービス、ChatGPTだった。
添付されてきた写真をアップロードし、次のようなプロンプトを打ち込んだのだ。「ランボルギーニには注目しないでくれ。背景にぼやけて映っている車両に焦点を当ててほしい」。
このアプローチが功を奏した。ChatGPTは写真に写り込んだ標識、植生、周辺の車両を分析し、撮影場所を特定するための貴重な情報を提供した。
ChatGPTからもたらされたヒントを元に、ガルシア氏はグーグル・アースやグーグル・ストリートビューで愛車が撮影された場所を割り出したという。なんとカリフォルニア州からは遠い、コロラド州デンバーだったそうな。
確証を得た彼は、現地警察に通報し、現地にて2年ぶりにウラカンEVOと再会を果たした。
徐々に明らかになる真相、しかも謎も残る…
なんでもガルシア氏のウラカンEVOは、単独の盗難ではなかったことが分かっている。犯行グループは高級車ばかりを狙い、個人所有車をレンタカーとして貸し出すシェアリング・サービスを悪用。
予定していた返却日時を無視し、書類を偽造して転売していた。被害車両の多くは既に回収されていたが、ガルシア氏の車だけは長らく行方不明のままだった。
カリフォルニア州の裁判所では、窃盗に関与したとされる容疑者2名が起訴されており、うち1名は既に有罪判決を受け量刑を待つ身だ。もう1名は10月に審問を控えている。
一方、コロラド州でガルシア氏のウラカンEVOを所持していた人物の事件への関与については、捜査が続いている。なお、アメリカでは真の所有者はいつでも所有権を主張できる。
つまり現在、捜査を受けている人物がたとえ無実で、偽造書類を信じてしまったとしても、ウラカンEVOは返還しなければならない。
それにしても盗難車であるにもかかわらず、グローブボックスに真のオーナー、ガルシア氏の名刺が乗っていたとは…。この理由については依然謎のままである…。
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