企業別平均燃費を悪化させる純ガソリンエンジン車が売れ過ぎては困る
また純ガソリンエンジンの廃止には、二酸化炭素の排出抑制を目的にした燃費規制も関係している。「2030年度燃費基準」を達成するには、企業(メーカー)別平均燃費を2016年度に比べて30%以上も改善する必要がある。そのためには、燃費性能の優れたハイブリッドやPHEV、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率を増やさねばならない。
ジャパンモビリティショー2025では、ダイハツが「Kビジョン」の名称で、軽自動車のフルハイブリッドを参考出品していた。開発者は「2030年度燃費基準をクリアするためにも、燃費の優れた軽自動車のハイブリッドが必要になる」と述べた。
小型/普通乗用車が純ガソリンエンジンを廃止してハイブリッドのみにする背景にも、2030年度燃費基準がある。ダイハツの場合、ターボエンジンを搭載する軽スポーツカーのFRコペンを発売する予定だが、そのためには燃料消費量の少ないハイブリッドも用意して、燃費のバランスを取る必要が生じる。
見方を変えると、2030年度燃費基準をクリアするには、企業別平均燃費を悪化させる純ガソリンエンジン車が売れ過ぎては困る事情もある。そこでハイブリッドを存続させて、純ガソリンエンジンを廃止する傾向も生じてきた。
ちなみにスズキスイフトの2WDでは、マイルハイブリッド装着車でなくても、直列3気筒1.2Lエンジンを搭載して23.4km/Lだ。ジムニーノマドの燃料消費量はスイフトの1.7倍だから、これが大量に売れると、2030年度燃費基準の達成で不利になる。
こういった事情もあるから、今後は電気自動車を含めて、2030年度燃費基準で有利な車種に特化してラインナップされるようになる。
残価設定ローンがハイブリッドを購入しやすくする?
そうなればハイブリッドと純ガソリンエンジンの価格差が縮まっているものの、クルマの価格はますます高くなる。この不利を緩和するのが残価設定ローンだ。
例えばトヨタノアの場合、ハイブリッドS-Z・2WD(392万9200円)の価格は、純ガソリンエンジンのS-Z・2WD(357万9400円)に比べて34万9800円高い。
しかし残価設定ローンを5年間の均等払いで利用すると、月々の返済額は、ハイブリッドが5万2500円で純ガソリンエンジンは4万7900円だ。月々4600円を多く支払うと、ハイブリッドを購入できる。残価設定ローンを利用すると、上級グレードが割安に感じられるため、ハイブリッドも購入しやすくなる。
以上のような理由により、純ガソリンエンジンを廃止してハイブリッドに絞る車種が増えている。時代の流れといえるが、価格が全般的に安いコンパクトな車種を現金で買う場合は、ハイブリッドの搭載に伴う35万~40万円の価格アップは負担が大きい。
純ガソリンエンジンが350万円のクルマにとって、35万円の上乗せは10%の増加だが、純ガソリンエンジンが200万円の車種では18%に相当するからだ。
またボディが軽くエンジン排気量の小さな車種は、純ガソリンエンジンでも燃費が優れているから、ハイブリッド化しても燃費向上率は小さい。だから軽自動車にはフルハイブリッドがないのだ。
純ガソリン車の新車販売が禁止されるのは、東京都が2030年、日本政府が2035年と決まっているが、この先、年を追うごとにカタログから純ガソリン車が消えていくだろう。
エンジン排気量が1.5L以下の車種では、純ガソリンエンジンも残してほしい。切実に安価なクルマを必要としているユーザーもいるからだ。はたしてそこまでして、純ガソリン車を廃止する必要があるのだろうか。


コメント
コメントの使い方欧州発のCAFE規制が傾かない限り難しいですね
オワコンではないのに、欧米のエゴ丸出し規制のせいで「消費者に罰金分を転嫁しないのなら廃止するしかない」状況。
高くても買う消費者相手の商売なら、今後も出し続けられます。
現実的にはブランド系と高性能スポーツのみに限られていくでしょうね。