最近デジタル化が進む自動車カタログ。近年のカタログは仕様紹介が主なものだが、少し時代を遡ると、重厚な小説を読んでいるような独特の世界感に引き込まれるカタログが数多くあった。昭和・平成初期・2000年代と、各年代を代表する秀逸なコピーを持った、名車たちを紹介していきたい。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーWeb編集部ほか
【画像ギャラリー】一度目にしたら忘れられない!? 名車たちの世界観をつくりあげたフレーバーテキストやキラーワードはいまも響く!?(11枚)画像ギャラリー昭和名車のコピーは荘厳
まずは、含みを持たせてユーザーに想像させる、トヨタ独特のワードセンスが光る一台。
1985年に登場し、現在も人気が衰えないAE86型カローラ・レビンのカタログには、こんな一節が載っている。「スポーツの意味を、教えてあげよう。リアル・ヒューマンスポーツ新レビン誕生。」
ここを見ただけで、もうレビンに乗りたくなってくる。他にも「スポーツにもクオリティがある」とはじまり、「いつからスポーツは、ただのファッションになりさがってしまったのだろう」と、ノンフィクション小説を読んでいるような、言葉選びが目立つカタログだった。
デートカーはキャッチコピーも秀逸だった!
また、写真と一言で、明瞭に示すのは、1980年代のホンダの上手さ。
1987年登場のプレリュードでは、横からの外観写真に「ひとに、響く」と添えられカタログがスタートとする。すると、次ページからはフロント写真とともに「大地を這う」、フロント・リアの寄りの写真とともに「気配がする」、内装写真とともに「透きとおる」という言葉しか記されていない。
写真と一言だけを載せる割り切った作り方なのだが、それで事足りるのが不思議な魅力である。
平成名車のコピーはファッショナブル
平成カタログのコピーでは、スバルが秀逸。1997年登場のフォレスターでは、SUVとは一線を画していることを印象付けるフレーズがあった。「たとえば高速のコーナー。背の高いクルマではじめて安全が語れます」。SUVに、走りという新たな価値を提案するフォレスターを、よく表した言葉だと思う。
そして、ワゴンブームの火付け役である、レガシィ・ツーリングワゴンのカタログに載っている一節がコチラ。「コンクリートの上よりは、土の上の方が贅沢かもしれない」。発表から四半世紀が経過するが、現代社会でも十分に沁みる名言である。
人気になったクルマはコピーも刺さる!
また、平成のスズキもいい味を出しているのだ。1990年登場のアルトワークスでは、「そこのけ、そこのけ、ワークスが通る。」と一度見たら忘れないコピーが躍る。オシャレなデザインで高スペックなアルトワークスを、見事に表現した一言だ。
1993年登場のカプチーノのでは、オープンカーの特性を生かし、「オープンに生きませんか」という一言がニクイ。ジムニーシエラ(1993年)では、「大地がくれたカラダだ。」というワードにゾクゾクさせられる。力強さを感じる、いい言葉だ。
2000年代コピーは言葉遊びが主流?
2000年代の1発目は、ダイハツの初代タント。子供が立ち上がれるような室内高を実現し、ファミリーカーの新たな提案でもあったタントでは、「親子にピッタント」という可愛いコピーが光った。
また車名のNにかけて「ニュー(NEW)ネクスト(NEXT)ニッポン(NIPPON)ノリモノ(NORIMONO)」と高らかに言い切ったN-BOXも忘れてはならない。英語は前半の2つだけで、ニッポンもノリモノも日本語というのが、このコピーの印象をさらに強めているだろう。2000年以降のホンダのコピーは、すっきりと覚えやすく印象に残る。
印象に残るコピーというと、テレビCMを思い浮かべるが、商談の最前線で活躍するカタログにも印象的なワードが数多く並んでいる。
読み物としてのカタログが最近は減ってきたが、デジタル化が進むこれからも、ただの機能紹介ではなく、物語を感じる「読めるカタログ」が増えていってほしい。
















コメント
コメントの使い方