2025年9月25日、ついにオフィシャルローンチを迎えたウーブン・シティ。イベントに出席したMaster Weaver(マスターウィーバー)の豊田章男会長は「ここで必要なのは『カケザン』です」とスピーチ。会長が語る「カケザン」の意味とは!?
※本稿は2025年10月のものです
文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部、トヨタ
初出:『ベストカー』2025年11月26日号
笑顔のカケザンがつくり出す未来
ついに実証が始まったウーブン・シティ。2020年のCESで豊田章男社長(当時)がその構想を発表して5年、驚くべきスピードといっていい。
それだけ豊田章男会長はじめ、トヨタの「モビリティの未来」に対する危機感が強かったといえるかもしれない。ウーブン・シティの土地は自前で国からの補助金も一切受けていない。
これほどの大きな事業であれば国や自治体と一緒にやろうと思うのが普通だろう。しかし、さまざまな規制のもと進めることになり、欧米勢にスピードで負けてしまうことをトヨタは知っている。
豊田章男会長にウーブン・シティを作ろうと思ったきっかけについて尋ねると「日本にもこういうことができることを世界にアピールしたかった」と答えてくれた。
言い換えれば「日本が元気だと世界にアピールしたい」となる。豊田章男会長はウーブン・シティで始まるさまざまな実証実験によって日本を元気にできると考えている。
豊田章男会長はイベントにハッピを着て登壇した。ローンチ自体がお祭りなのだろうが、その姿から想像するに「みんなで元気になろう」というメッセージに加え、「ウーブン・シティはヒト中心」であることを再確認する想いがあったのだろう。
「自分は町内会長」と言い、「あれやっちゃダメ! これやっちゃダメ!」ではなく「あれやってみたい、これやってみたい」を誰よりも大きな声で言う人だと話した。これで、ウーブン・シティに抱いていたイメージが、人のにおいのするものに変わったと感じた人は多いと思う。
ウーブン・シティは実証実験を行うインベンターズ(発明家)とここで実生活を送るウィーバーズ(住民・訪問者)で構成される。クルマの開発で言えばインベンターズは開発者でウィーバーズはテストドライバーの関係にあたり、お互いは常にフィードバックとカイゼンを繰り返していく。
トヨタはウーブン・シティをスマートシティではなく、未来をつくるためのテストコースだという。それはトヨタだからというだけではなく、この土地がトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地だからだ。
過去と現在を受け継ぎ未来につなげていくことが使命
ウーブン・シティはトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地につくられた。トヨタは東日本大震災で甚大な被害が出た東北地方の復興を、モノづくりを通じて支援することに決定した。
寄付といった一過性の支援よりも、モノづくり、ヒトづくりこそが大きな支援になると豊田章男社長(当時)は決断したのだ。トヨタ自動車東日本の東富士工場は閉鎖され、新たに岩手県と宮城県にできた工場へと移管された。
オフィシャルローンチの3日前、粋なイベントがあった。トヨタ自動車東日本の東富士工場で働いていた従業員の皆さん125名がウーブン・シティに招かれ、内見会が開かれたのだ。
そこでウーブン・バイ・トヨタの豊田大輔SVPはこんな挨拶をした。
「ウーブン・シティは、『過去』『現在』を受け継いで、『未来』につなげていくプロジェクトです。正解がわからないなかで、みんなで模索していきたいと思います。(トヨタが)モビリティカンパニーに変わっていくなかで、『次の道を発明しよう』と掲げています。
でも『何をすればいいんだろう』と、正直わからないこともたくさんあります。そういう時に『こういうものがあったらいいな』を具現化しやすかったり、すぐ試せる場所、そして困った時に立ち止まったり、立ち戻れる場所が必要だと思います」。
ウーブン・シティの狙いや役割を現場目線の本音で語っていることに注目したい。
豊田大輔SVPは、ここは53年間「もっといいクルマづくり」が行われた場所であり、モノづくりの魂が、この場所には込められているとしたうえで、
「先人たちがしてきたことと、形、姿は違うけれども、同じ想いを背負って実施させていただき、今の我々世代の想いを込めて、未来の世代に、その魂を託していきたい」と話した。


















コメント
コメントの使い方オフ会でお話しした富士の建築業の方、仕事の精度はこれまでに無いほど高い水準を要求されるが、
そのぶん儲かって仕方ない、業界を変えたとホクホク顔で仰ってました。
トヨタはウーブンシティでこれから様々な事を変えていくでしょうけど、既に特需を生み出して一部業界の多くの人生を変えているんですよね