トヨタ ブレイドの理想と現実 儚く散った小さな高級車!? 【偉大な生産終了車】

■ゴルフ 1シリーズ…輸入ベンチマークモデルとの比較で見えてくる当時のトヨタの姿

 トヨタ ブレイドが1代限りで販売終了となってしまった理由。

 それは、酷な言い方にはなりますが「走りがイマイチだったから」ということに尽きるでしょう。

 とはいえブレイドは決して欠陥車ではありませんので、ごく普通に走ることは(当たり前ですが)可能でしたし、極端に悪い部分があったわけでもありません。

 ですが「小さな高級車」を標榜すると、どうしてもライバルは国内の大衆ハッチバック各車ではなく、ドイツのフォルクスワーゲン ゴルフやBMW 1シリーズあたりになりますので、ユーザーはそれら欧州車とブレイドを直接比較して考えることになります。

 また途中から登場した280psの3.5L V6エンジンを搭載する「ブレイドマスター」に至っては、3.2LのV6エンジンを搭載したイタリアのアルファロメオ147GTAという本格ホットハッチなどとも比べられました。

 そういった欧州製ハッチバックと比べてしまうと、トヨタ ブレイドの足回りというか、走りの全体的な感触は、決してホメられたものではありませんでした。

エンジンはオーリスが直列4気筒の1.5Lと1.8Lを用意するのに対して、ブレイドは2.4LとV型6気筒の3.5Lを搭載。全高は1500mmを超え4名乗車にも適した。車名のブレイド(BLADE)は刃(やいば)を意味し、「人を魅了する鋭さを持ったクルマ」の意味を込めて付けられた

 エンジンパワーはそこそこあるのですが、それを操るステアリングやサスペンションに今ひとつ締まりがないため、速度を上げる気になれない……というのが正直なところだったのです。

 またエンジンパワーといえば、2007年8月に追加されたブレイドマスターの3.5L V6エンジンは「最高出力280ps!」という触れ込みでしたが、実際に乗ってみると「……これ、本当に280psも出てるの?」というニュアンスの“カタログ番長”でした。

 このあたりも、ブレイドという車のイメージが悪化した遠因だったかもしれません。

 いずれにせよトヨタ ブレイドは、当然の道理として不人気車となり、そして当然の道理として「廃番」になった車だと言えます。

 この時期のトヨタは、ソツのない車を作らせたら上手だったのかもしれませんが、「走りの良さを標榜する何か」を作るのは不得手なメーカーだった――ということなのでしょう。

 しかしその後、時代もトヨタも変わりました。豊田章男社長の号令が効いたのか、新型ヤリスなどの「走りの面でもグッとくる車」が数多く登場しています。

 ということで、ブレイドの記憶は忘却の川へと完全に流し去り、「新しいトヨタ車」たちに期待していくというのが、自動車愛好家としての生産的な姿勢であるはずです。

■トヨタ ブレイド 主要諸元
・全長×全幅×全高:4260mm×1760mm×1515mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1490kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、2362cc
・最高出力:167ps/6000rpm
・最大トルク:22.8kgm/4000rpm
・燃費:13.4km/L(10・15モード)
・価格:277万2000円(2008年式G バージョンL )

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