燃料価格の安さもあって根強い人気を誇るディーゼル車だが、冬になるとオーナーをソワソワさせる“ある悩み”が存在する。それが「軽油が凍る」という現象である。そこで今回は、都心部で一般的に販売されている2号軽油と、寒冷地の冬期に販売される3号軽油を冷凍庫に放り込むとどうなるのか? その実験に挑んだのである!
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobestock(トップ画:Syda Productions@Adobestock)
都市部のディーゼル車オーナーが知らない「軽油の基礎知識」
寒冷地に住んでいる人にとっては「今さら何を言っているんだ」という話かもしれないが、都市部や雪の少ない地域のディーゼル車オーナーは、こうした“軽油にも種類がある”という基本を知らないまま乗っているケースも多い。
軽油の最も重要な性状は“流動点”であり、JIS規格(JIS K 2204)ではこの流動点の違いによって、特1号から特3号まで全5種類に分類されている。
特1号軽油は流動点+5℃以下、1号軽油は−2.5℃以下、2号軽油は−7.5℃以下、3号軽油は−20℃以下、特3号軽油は−30℃以下というスペックである。特に、冬季にスキー場など寒冷地へ出かける際には、軽油選びを誤ると最悪“命に関わる”ので注意が必要である。
軽油には元々灯油成分が含まれており、この灯油成分が多いほど低温時に濁りやすく、流動性が落ち、最悪は凍結する。灯油成分を取り除く手間が少ない分、1号軽油はコストが安く、夏場は全国的に1号軽油が使われる。そして10月頃から地域の気温に合わせて2号軽油 ⇒ 3号軽油へと切り替わっていく。
ここで厄介なのが、普段は都市部の市街地しか走らないクルマが、スキーなどで積雪地へ向かうケースである。都市部では真冬でも1号軽油や2号軽油が供給されているため、出発前に満タンにして寒冷地へ行くと、その道中や翌朝に軽油が凍りつき、エンジンがかからなくなる、というトラブルが実際によく起きるのだ。
2号軽油 vs 3号軽油 冷凍庫ガチ対決の結果はこうなった!
ちなみに、2号軽油が一般的な東京などでも3号軽油は購入できる。これは、長距離トラックが利用する幹線道路沿いのガソリンスタンド(※すべてではない)では、12〜3月の期間のみ3号軽油を供給しているためである。気になる場合は、事前に各スタンドへ問い合わせてみるとよい。
さて、ベストカーWebでは各軽油を中身が見えるガラス瓶に入れ、編集部の冷凍庫へセットして実験開始である。
冷凍庫に入れて約1時間、庫内温度は−14.6℃まで低下。これは2号軽油がギリギリ流動性を保てる温度である。
状態を確認すると、3号軽油はまったく問題なし。しかし2号軽油はワックス成分(パラフィン)が析出し始め、明らかに流動性が悪化していた。この状態でエンジンを始動しようものなら、燃料フィルターや配管が詰まり、エンジン不動……という事態に陥るわけである。
その後さらに時間を置くと、庫内温度は−21.4℃に到達。これはもはや厳冬期の北海道レベルである。
この温度では2号軽油はフローズンドリンクのように氷の結晶が発生し、完全に使用不可。3号軽油もさすがにワックス成分が固まり始めていた。もしこのクラスの寒さに向かうなら、3号より流動点の低い特3号軽油が必要になるだろう。
なお、「凍った軽油はもうダメなのか?」という疑問を持つ人も多いが、全国石油協会によれば、低温で析出したワックス成分が再び融ければ元の品質に戻るという。つまり、一度凍っても使い物にならないわけではないので、そこは安心してよい。
【画像ギャラリー】軽油は凍る! 実際にベストカーWebの実験で凍った軽油をご覧あれ!!(5枚)画像ギャラリー










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