超名門レガシィが風前の灯!? スバルの宝が日本クルマ界に遺した軌跡

■安全性能へのこだわり

 当時は今と違って安全性に対する認識が薄く、日本車の多くはボディがヤワだった。また、衝突安全性能と危険回避性能もヨーロッパ車に大きく後れをとっている。

 だが、航空機メーカーを母体とするスバルは、走りの実力だけでなく「安全」に対するこだわりも強い。

 だから強大なトルクのターボエンジンに負けない強固なシャシーを開発した。

 路面や天候に関わらず安全に、愉しく運転できるシンメトリカルAWDにも磨きをかけている。この真摯な姿勢は今のスバル車にも見られるDNAだ。

 2代目レガシィは積極的にバリエーションを拡大し、1995年夏に「グランドワゴン」を投入した。

2代目レガシィ グランドワゴン(1995年)

 これは「ランカスター」と改名し、現在は「アウトバック」を名乗っている。今につながるクロスオーバーカーの先駆車で、流行に火をつけた。

 また、名門ビルシュタイン製のダンパーを採用し、走りの実力を一気に引き上げたことも特筆できるポイントのひとつだ。

■3代目〜4代目(1998-2009)…ツーリングワゴン/B4体制の確立と充実

 1998年6月に3代目のツーリングワゴンがベールを脱ぎ、セダンは半年後に「B4」と名を変えて登場する。時代に先んじて車両挙動安定制御のVDCを標準装備したグレードを設定したのも、この3代目だ。

 スバルは早くからステレオカメラやレーダーに関する研究を始めていたが、ランカスターに採用したADAも注目の安全装備である。

 この運転支援装備は2003年にステレオカメラにミリ波レーダーを組み合わせたシステムに進化。4代目では「アイサイト」に発展させ、5代目で普及させている。これもレガシィの偉業と言えるだろう。

 2003年に登場した4代目レガシィは初めて3ナンバーのワイドボディを採用し、運動性能を飛躍的に高めた。

 この年、レガシィは日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝き、12月には国内販売累計100万台の偉業も達成している。

 もちろん、北米を中心に海外でも売れに売れた。2006年に新しいドライバーアシスト装備のSIドライブを、2008年にはアイサイトを投入と、攻めの姿勢を貫いている。

■5代目(2009-2014)…アウトバックの台頭と北米への進出

 劇的な変身を遂げるのは2009年に登場した5代目レガシィだ。

 北米で人気の高いアウトバックを主役に据え、エンジンを2Lから2.5Lに拡大するとともにCVTのリニアトロニックを主役にしている。

 ボディもひと回り大きくした。快適性を高めた第5世代のレガシィは北米で大ヒットした。だが、日本では4代目ほどの人気を得られず失速する。

 一世を風靡したツーリングワゴンも販売を落ち込ませ、セダンのB4より販売台数が少ない月が増えてきた。

■6代目(2014年-)…スバルが決して失ってはならないレガシィの遺産とは

 レガシィは2014年秋に6代目にバトンを託している。世界基準の大柄なボディをまとい、ドル箱だったツーリングワゴンは整理(廃止)した。また、自然吸気エンジンだけに絞り、ターボ搭載車は消滅させている。

 レガシィらしさ安心感のある走りは受け継がれた。だが、魅力のひとつだった水平対向エンジンの個性は薄れている。

 レガシィの魅力は、メカニズムに対するエンジニアの強いこだわりだ。エンジンも駆動方式も個性的で、運転支援システムのアイサイトやSIドライブも時代に先駆けて採用した。

 レガシィを熱狂的に愛するスバリストは、運転するのが楽しいスバル車のメカニズムに、畏敬の念を払うとともに惚れ込んでいたのだ。

 が、5代目からレガシィは軸足を北米に置いた。

 ボディを大きくし、メカニズムや素材のコストダウンも目立つようになっている。ターボを搭載したスポーツモデルがなくなったのも痛手だ。

 環境性能において一級の実力を持つハイブリッド車でもあれば、そのハンディをはねのけることができただろう。

 だが、その回答は先送りされ、ファンを失望させた。また、デザインから若さが消えたこともユーザーのレガシィ離れを引き起こしたと言えるだろう。

 リーマンショック以降、レガシィはコストダウンに走り、日本の熱狂的なファンを大事にしなくなっていたといえるのではないか。

 だからインプレッサとレヴォーグにスバルの代名詞としてのポジションを奪われ、影の薄い存在となった。

 ワゴンブームが去ったと言われるが、BMWやメルセデス・ベンツ、アウディなどのワゴンは日本でも売れている。スバルは自らの手でフタを閉めてしまったのだ。

 たゆまぬ努力によって、神話を作り、多くの人に感動と喜びを与えてきたレガシィ(アウトバックではない)の戦う姿勢を、今一度スバルの首脳陣とエンジニアは思い出してほしい。

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