三菱i スモール軽の革命児 が辿った悲運とは 【偉大な生産終了車】

■時代がそぐわなかった? i不振の理由とは

 力作だった三菱iが1代限りで生産終了となってしまった理由。それは、ビジネスではありがちな落とし穴ですが、「良いモノを作りさえすれば必ず売れる!」と思ってしまったことでしょう。

 簡単に言うと「マーケティングの失敗」ということになります。

 三菱iという車は、前段で述べたとおり丁寧に作られた、良い車だったと思います。

 リア・ミッドシップということで挙動に若干のクセはありますが、その分だけ車内は非常に広く、デザインも――好き嫌いはあるかもしれませんが――斬新さと親しみやすさが同居しているハイレベルなものでした。

 「こんなにハイレベルな軽自動車を作ったのだから、車両価格が少々高いとしても、買ってくれるお客様は多いだろう。そういったモノのわかるお客様と一緒に、我々は軽自動車の新時代を切り開くのだ!」

 そのように三菱自動車の人々が言ったかどうかは知りませんが、まぁおおむねそんな感じだったのではないかと推測します。

リアビュー。ゆったりとした室内をひとつのラインで包んだ“ワンモーションシルエット”による高いデザイン性は、グッドデザイン大賞(2006年)、第27回(2006-2007)日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞など、数々の賞を受賞している

 しかし実際の軽自動車ユーザーの購買マインドはまったく違っていました。

 ハイト系の軽自動車であれば、日本のユーザーはその「背の高さ」にエクストラマネーを払ってくれます。しかし「背が高くない軽自動車」は、いくら車内が前後に長くても、いくら走りの質感が高くても、安くないと今ひとつ売れないのです。売れないというか、「それ」を求めているユーザーの数が少ないのです。

 しかし三菱自動車としては「でも、iならばそんな現状を打破できる! 新しい市場を開拓できるはず!」と判断したのでしょう。

 その意気や良しであり、筆者も、個人的にはそんな熱い思いを尊敬したいと思います。しかし三菱の理想は、現実の前に敗れ去りました。

 そもそも三菱iは、日本だけのガラパゴス的商品である「軽自動車」として作ったのが間違いだったのかもしれません。

 2003年に作られたプロトタイプ(全幅1505mm)よりもう少し幅広なボディにして、その後軸上に1Lターボぐらいのエンジンをマウントしたバージョンを世界に向けて売り出したならば、三菱iは「異色の実力派コンパクト」として、もしかしたらてっぺんを取れたのかも……などと夢想はしますが、まぁ実際のところはわかりません。

 いずれにせよ軽自動車としての三菱iは2013年、まことに残念ながら討ち死にと相成りました。

■三菱i(アイ)主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1600mm
・ホイールベース:2550mm
・車重:960kg
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ、659cc 
・最高出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:9.6kg-m/3000rpm
・燃費:―km/L(10・15モード)
・価格:161万7000円(2006年式G 4WD)

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