2026年7月、日産自動車のフラッグシップミニバン「エルグランド」が16年ぶりにフルモデルチェンジを果たす。現行エルグランドが登場したのは2010年のこと。その間、ライバルのトヨタのアルファード・ヴェルファイアは着実に世代を重ね、今やLサイズミニバン市場を事実上独占する「絶対王者」の地位を築いた。しかし両車の差は大きくなりすぎたとも思えない。実際のところ、新型エルグランドをトヨタ営業マンはどう見ているのか取材した。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部、日産
【画像ギャラリー】アルヴェルとの最大の違いは2列目にあり!! 中折れ機能と乗り降り性は断然エルグランド(21枚)画像ギャラリー16年ぶりの刺客、現れる?
新型エルグランドは、第3世代e-POWERと電動4WD「e-4ORCE」を全車に搭載し、インテリジェントダイナミックサスペンションや14.3インチの統合ディスプレイ、BOSEの22スピーカーシステムまで搭載する。デザインコンセプトは「The private MAGLEV(リニアモーターカー)」。走るプライベートラウンジを標榜するその内容は、紙の上では確かに圧倒的だ。
では、最も敏感に反応するべきトヨタのディーラー営業マンたちは、この新型エルグランドをどう受け止めているのか。
「技術はすごい。でも……」という本音
トヨタ系ディーラーの営業マンたちの反応は概ね一致していた。「スペックは本物だと思う。でも、価格設定を見た瞬間に安心した」というものだ。
新型エルグランドのエントリーグレードは689万7000円、最上位のだと869万8000円である。一方のアルファードのエントリーグレードは559万9000円で、最上位のプラグインハイブリッドで1069万9700円だ。エントリーグレードや売れ筋グレードの価格帯を比較すると、エルグランドの価格設定はアルファードより高い傾向にある。
「この価格設定ならアルファードが勝つでしょう」と、トヨタの営業マンは語る。脅威とは感じていないように見受けられた。
両者の「有る無し」を比較するとトヨタの余裕が見えてくる
エクステリアデザインには個々人の好き嫌いがあるが、インテリアについては機能性という明らかな尺度がある。ここの違いを見ていこう。
まずインパネ周りは、センターディスプレイ一体型メーターが特徴的なエルグランドと、大型モニターが中央に備えられ左右対称デザインのアルファードという格好。エルグランドの内装は柔らかな雰囲気を醸し出すが、どこか奇をてらった印象も残る。対して、アルファードは「ザ・ショーファーカー」という感じ。高級感という印象ではアルファードに軍配が上がりそう。
しかしながら助手席にオットマンが付くのはエルグランドの素晴らしいところ。ここはアルファードに足りないポイントでもある。
最大の「壁」はリセールバリューである
そしてトヨタの営業マン最大の余裕は、アルファードのリセールバリューの高さにあるのだろう。
アルファードは3年後でも新車価格の70%前後で売れるという圧倒的な実績を持つ。最近、リセールバリューが下降気味だが、それでも十二分と言ったところ。特に残価設定ローンでの販売時に、リセールバリューの高さが生きてくるのだ。エルグランドがどの程度のリセールバリューになるのか。ここが、エルグランド復権のカギを握っていくだろう。
ここまでくると、新型エルグランドに勝ち目はないかのように見える。しかし話はそう単純ではない。
「アルヴェルは乗っている人が多すぎる」という声は、富裕層の間で確かにある。アルファード・ヴェルファイアは法人需要も含めて街に溢れており、個性を求めるユーザーには逆に敬遠される存在となりつつあるのだ。新型エルグランドが掲げる「走るプライベートラウンジ」というコンセプトは、そうした層への明確なアンチテーゼとなるだろう。
紛れもなく、第3世代e-POWERとインテリジェントダイナミックサスペンションが生み出す走りの質感は本物だ。静粛性や乗り心地でアルファードを上回る部分があるという声も多いから、販売現場でいかに試乗させられるかが、エルグランドの販売実績に大きく影響してくるだろう。
もちろん新型エルグランドが真の意味でアルファードの牙城を崩すためには、リセールバリューの確立も不可欠だ。ある種のプレミアム性がエルグランドにも出てくると、本当の意味での「勝負」になってくるのだろう。
16年ぶりに登場した刺客の実力は本物だ。ただし、その実力が発揮できるかは、今後の販売力にかかっている。キングオブミニバンはアルファードかエルグランドか。どちらにしても、ラージクラスミニバン市場が熱くなるのは、日本の自動車業界にとって良い兆しである。
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