軽乗用車の多くが前輪駆動を採用するなか、スズキ エブリイの2WD車は後輪駆動だ。前席下に縦置きしたエンジンから、プロペラシャフトを通じてリアタイヤを駆動するFRレイアウトを守り続けている。なぜ働く軽バンには後輪駆動が向いているのか。積載と走りから考えてみよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、スズキ
【画像ギャラリー】エブリイワゴンならルーフもちょっとスポーティでかっこいいぞ!(6枚)画像ギャラリー荷物の重さを駆動力に生かせる後輪駆動
エブリイのエンジンは、短いボンネット内ではなく前席下に搭載される。運転席を車体前方へ寄せるキャブオーバー型とすることで、全長3395mmの軽自動車ながら最大1910mmの荷室長を確保した。
エンジンからの力はCVTまたは5MTを経て、車体中央を通るプロペラシャフトからリアデフへ伝えられる。2WD走行時に駆動するのは後輪だ。
後輪駆動の利点が大きくなるのは、荷物を積んだとき。エブリイの荷室は前席後方に広がり、荷物の重さの多くが後輪付近にかかる。駆動輪であるリアタイヤに荷重が加われば、路面をつかむ力も高まりやすい。最大積載量350kgの状態でも、駆動力をしっかり路面へ伝えられる理にかなった構成だ。
登り坂で発進する際も、車体の荷重は後方へ移る。前輪駆動では駆動輪が軽くなる方向だが、後輪駆動はリアタイヤへの荷重が増えるため、重い荷物を載せた状態で有利になる。
前輪が操舵、後輪が駆動を担当する役割分担もFRの特徴だ。前輪にエンジンの駆動力が加わらないので、積載時でもステアリングに余計な力が伝わりにくい。アクセルを踏みながら曲がる場面でも、自然な操舵感を得やすい。
前輪の切れ角を確保して最小回転半径4.1m
前輪にドライブシャフトを持たない2WD車は、タイヤの切れ角を大きく取りやすい。エブリイの最小回転半径は4.1m。全長は軽自動車規格いっぱいだが、狭い路地や配送先、駐車場で小回りが利く。
ただし、広い荷室を生み出している主役はFRそのものではなく、エンジンを前席下へ収めたキャブオーバー設計と四角いボディだ。プロペラシャフトやリアデフを床下へ配置しながら、荷室床を平らに仕上げたパッケージングの巧さが光る。
後輪駆動にも弱点はある。荷物を積んでいない空荷時はリアが軽く、雨や雪、ぬかるみでは後輪が滑りやすくなることがある。前席下のエンジンは、一般的なボンネット内搭載に比べて音や熱を感じやすい点も商用車らしい割り切りだ。
雪道や未舗装路を走るなら4WDが安心。5MT車はパートタイム4WD、CVT車は「2WD」「4WD AUTO」「4WD LOCK」を選べる電子制御式パートタイム4WDを採用する。通常は後輪駆動で走り、滑りやすい場面では前輪にも駆動力を配分できる。
エブリイのFRはスポーツ走行のためではない。重い荷物を載せて確実に進み、狭い場所でくるりと向きを変えるための後輪駆動だ。働く軽バンに必要な積載力と機動力を支える、まさにプロのためのレイアウトなのだ。
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