長らく続いた低金利環境が転換点を迎えるなか、「今は残価設定ローンを組むべきではない」という声を耳にする機会が増えてきた。こうした声はどのような要因で生まれているのか。残クレの仕組みと金利上昇の関係を整理しながら検証する。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ、マツダ、ホンダ
【画像ギャラリー】リセールがいいクルマたち! 今、残価設定ローンを組むべきではないってマジ?(8枚)画像ギャラリー残クレは「元金が減りにくい」構造を持っている
この主張の根拠を理解するには、まず残価設定ローンの仕組みを押さえておく必要がある。残クレは、契約時に数年後の下取り予想価格(残価)をあらかじめ設定し、車両価格からその残価を差し引いた金額を分割払いする仕組みだ。返済期間中、残価分の元金はローン残高として据え置かれたまま、その部分にも利息が発生し続ける。
通常の分割払いであれば、返済が進むにつれて元金が着実に減っていき、利息の発生する母数も小さくなっていく。しかし残クレは、契約満了時まで残価分の大きな元金が残り続けるため、利息が発生し続ける期間と金額が通常ローンより大きくなりやすい。この構造こそが、金利上昇局面で残クレが不利になりやすいと言われる根本的な理由だ。
具体的な数字で見てみよう。借入元金300万円、返済期間5年、金利2%のケースと、金利3%のケースを比較すると、総支払額の差はおおむね数万円程度に収まる。しかし残クレの場合、この元金のうち大部分(たとえば150万円程度)が返済期間を通じてほぼ減らないまま残り続けるため、同じ1%の金利上昇であっても、利息の絶対額に与える影響は通常ローンより大きくなるのだ。
借入額が大きく、残価設定比率が高い契約(つまり月々の支払いを軽くするために残価を厚めに設定した契約)ほど、金利上昇の影響を強く受ける。逆に残価設定比率が低い契約であれば、通常ローンとの差は縮まるので問題はない。つまり、高残価の人気車ほど、金利負担が高くなる傾向に、今後なっていくということなのだ。
ただし「今組むべきではない」は言い過ぎだ
ここまでの説明だけを見ると、残クレを避けるべきだという結論に飛びつきたくなるかもしれない。しかし、それは早計だ。まず、金利上昇局面であっても、残クレの金利は契約時点の金利で固定金利で確定するのが一般的だ。つまり、契約後に市中金利がさらに上昇したとしても、すでに契約している残クレの返済額が増えるわけではない。「今組む」ことのリスクは、将来の金利変動そのものではなく、今この瞬間の金利水準がすでに以前より高いという一点に集約される。
また、残クレのメリットは金利の高低だけで測れるものではない。数年ごとに新しいクルマへ乗り換え続けたいという使い方をする人にとって、月々の負担を抑えながら常に新車に乗れるという価値は、多少の金利上昇があっても十分に見合うことが多い。金利上昇局面だからといって、残クレという選択肢そのものを一律に否定するのは短絡的だろう。
今、優先すべきは「金利より残価設定比率」の見直しだ
金利上昇局面において本当に重要なのは、残クレを避けることではなく、契約内容そのものを見直すことだ。具体的には、残価設定比率をできるだけ抑え、頭金を厚くすることで、利息が発生し続ける元金部分を小さくするという対策が有効になる。残価設定比率が低ければ低いほど、通常ローンとの総支払額の差は縮まっていくからだ。残価率については、契約時に固定されていることも多いが、動かせる場合もあるため、営業マンに直接問い合わせてみてほしい。
また、契約前には必ず複数の返済期間・残価設定比率でシミュレーションを取り寄せ、金利が高くなった現状の条件下での総支払額を確認することが欠かせない。低金利時代に組んだシミュレーションの感覚のまま契約すると、想定より総支払額が膨らんでいることに気づかないまま契約してしまうリスクがある。
結論として、金利上昇局面において残クレそのものを一律に避けるべきという主張は、やや極端すぎる。残クレが持つ「元金が減りにくい」という構造上、金利上昇の影響を通常ローンより受けやすいのは事実だが、これは残クレを完全に否定する理由にはならない。
むしろ今の局面で求められているのは、残価設定比率を見直し、頭金を厚くし、複数のシミュレーションを比較したうえで契約するという、より慎重なローンの組み方だ。金利が上がったからこそ、これまで以上に契約内容を精査する姿勢が重要になっている。単純に「残クレはやめておけ」という結論に飛びつくのではなく、自分の乗り方に合った条件を見極めることが、今の時代に求められる賢い判断と言えるだろう。
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