電動化や運転支援技術の進化により、乗用車から急速に姿を消しているMT。そんな時代に、マツダ3は新型の2.5Lエンジンにも6速MTを用意した。しかも選べるのは廉価仕様ではなく、装備の充実した主力グレードである。この貴重な存在を絶やさないマツダの心意気に注目したい。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】マツダ3ファストバックのシフトがコレ!! 内装もオシャレすぎるぞ!(11枚)画像ギャラリー新しい2.5Lエンジンにも迷わず6速MTを設定
日本で買えるMT車は、いまや本当に少なくなった。ハイブリッドやBEVの普及に加え、先進運転支援技術との組み合わせにも手間がかかる。販売比率の低いMTを残すためには、専用部品の確保や認証にもコストが必要だ。結果としてMTは、一部のスポーツカーや商用車に限られる装備になりつつある。
それだけに、マツダ3ファストバックに6速MTが用意されている意味は大きい。2026年7月の商品改良では、従来の2Lエンジンに代わって「e-SKYACTIV G 2.5」を新設定。この新しいパワートレーンにも、マツダはしっかり6速MTを組み合わせたのである。
対象となるのは、前輪駆動の25Sと25Lだ。2.5L直列4気筒自然吸気エンジンは、最高出力179ps、最大トルク23.4kgmを発生。これに小型モーターを組み合わせたマイルドハイブリッドでありながら、ドライバー自身が6段のギアを選んで走れる。
大排気量の自然吸気エンジンとMTという組み合わせ自体が、いまや極めて珍しい。小排気量ターボのような急激な力の盛り上がりではなく、アクセルを踏み込んだ量に応じて素直にトルクが立ち上がる。エンジンの回転を自分で管理するMTとの相性は抜群だ。
さらに、独自の燃焼技術を使うe-SKYACTIV X 2.0搭載のX Touringにも、4WDと6速MTの組み合わせが残されている。こちらは最高出力190psで、WLTCモード燃費は17.7km/L。上質な5ドアハッチバックで、4WDとマイルドハイブリッド、6速MTを同時に選べるクルマなど、世界的に見ても希少である。
特別なスポーツモデルではないことがスゴい
マツダ3の6速MTが興味深いのは、巨大なリアウイングや派手なエアロパーツを備えた特別なスポーツモデルではないことだ。通常のマツダ3と同じ端正なデザイン、上質な室内、5人乗りの実用性を備えながら、クラッチペダルとシフトレバーが付いている。
最も手頃な25Sの6速MT車は305万8000円。6速AT車とまったく同じ価格なので、MTを選んだからといって余分な負担は生じない。しかもMT車はAT車より20kg軽く、WLTCモード燃費はAT車の15.6km/Lに対して17.0km/Lとなる。趣味性だけでなく、軽さや燃費にもメリットがあるのだ。
上級仕様の25Lでは、本革シートやBoseサウンドシステムなどを装備しながら6速MTを選べる。価格は326万7000円。MTといえば装備を削った競技ベース車というイメージもあるが、25Lは快適装備を満喫しつつ運転操作も楽しみたい、大人のクルマ好きにぴったりだ。
もちろん渋滞の多い市街地ではATが楽であり、誰にでもMTを勧められるわけではない。それでも、クラッチをつなぎ、エンジン回転を合わせ、自分の判断でギアを選ぶ行為には、クルマを単なる移動手段で終わらせない魅力がある。
売れる仕様だけに絞り込むなら、6速MTは真っ先に整理されても不思議ではない。それを新しい2.5Lエンジンにも組み合わせ、主力グレードとして残したマツダの判断は実に尊い。マツダ3の6速MTは、速さを競うためではなく、日常の運転そのものを楽しむための選択肢だ。いつまでも買えるとは限らないからこそ、欲しい人は新車で選べる今を大切にしたい。
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