スポーツカーでもなければ、ターボさえ積んでいない。それでもワゴンR ZLの5MT車には、車重わずか750kgという現代では貴重な軽さがある。49psのエンジンを5段ギアで使い切る走りは、数字以上に楽しそうだ。実用軽に潜む“ライトウェイトスポーツ度”を検証する。
文:ベストカーWeb編集部/写真:スズキ
【画像ギャラリー】CVTのシフトセレクター部分はごっそりなくなる!? MT仕様とCVT仕様の内装を比べてみて!(5枚)画像ギャラリー750kgの車体なら49psをしっかり使い切れる
現行ワゴンR ZLの2WD・5MT車は、車重わずか750kg。軽自動車だから軽くて当然と思うかもしれないが、電動スライドドアや大容量バッテリー、豪華な快適装備を搭載した最近の軽自動車には、車重が900kgを超えるモデルも珍しくない。
同じワゴンR ZLでも2WD・CVT車は770kgだから、5MT車は20kg軽い。上級グレードのHYBRID ZX・2WD車は810kgであり、それと比べると60kgもの差がある。
軽さが効くのは加速だけではない。交差点を曲がる、ブレーキをかける、坂道を上るといった日常のあらゆる場面で、エンジンやブレーキ、タイヤにかかる負担を小さくできる。クルマの動きが素直になり、ドライバーの操作に対する反応もつかみやすい。
搭載するR06D型660cc直列3気筒自然吸気エンジンは、最高出力49ps、最大トルク5.9kgm。単純なパワーウェイトレシオは約15.3kg/psで、絶対的な速さを期待する数字ではない。
しかし、750kgの軽い車体なら、49psを日常域でしっかり使い切れる。5MTでは道路の勾配や速度に合わせてギアを選び、必要ならエンジン回転を引き上げて加速できる。CVTのようにクルマ任せではなく、自分の判断が走りに表れるのだ。
速く走るためにシフトダウンするのではない。交通の流れに乗るために適切なギアを選ぶだけでも、エンジンの音や回転数、アクセル操作に自然と意識が向く。退屈になりがちな近所への買い物でさえ、小さな運転課題に変わる。
しかも2WD・5MT車のWLTCモード燃費は25.1km/L。CVT車の24.2km/Lを上回り、マイルドハイブリッドを積むHYBRID ZXと同じ数値である。軽さとシンプルな構造は、楽しさだけでなく経済性にも効いている。
スポーツカーではないからこそ日常で楽しめる
もちろん、ワゴンR ZLを本格的なスポーツモデルと呼ぶのは無理がある。ターボエンジンや専用サスペンション、大径ブレーキを備えているわけではなく、タイヤも155/65R14という実用重視のサイズだ。
全高は1650mmあり、低い車体で重心を下げたスポーツカーとも違う。シフトレバーやクラッチ、シートも速さを追求したものではなく、あくまで日常で扱いやすいように設計されている。
だが、その“普通さ”こそワゴンRの面白さでもある。パワーやタイヤの性能に頼らないため、一般道の速度でも加速、減速、変速というクルマの基本動作を味わえる。細いタイヤは交換費用を抑えられるだけでなく、無理に速度を上げなくても荷重移動を感じ取りやすい。
軽量プラットフォームのハーテクトには減衰接着剤が採用され、不快な振動やノイズを抑えながら、操縦安定性も高められた。最小回転半径は4.4mで、狭い道や駐車場でも取り回しやすい。峠道を攻めるためのクルマではないが、街中を軽快に走るための素性は整っている。
価格は2WDの5MT、CVTともに145万7500円。MTを選ぶために追加料金を払う必要はない。4WDにも5MTが用意され、こちらもCVTと同じ158万700円だ。
一方で、5MT車にはCVT車に装備される誤発進抑制機能や後方誤発進抑制機能、低速時ブレーキサポートが付かない。渋滞時の快適さや家族との共有、運転支援機能を重視するなら、CVT車のほうが適している。
それでも、自分でギアを選ぶことに楽しさを感じる人には、5MTを選ぶ理由が十分にある。高価なタイヤもハイオクガソリンも必要なく、4人が乗れて荷物も積める。普段の生活を何ひとつ諦めずに、運転の楽しさだけを加えられるのだ。
ワゴンR ZLの5MTは、スポーツカーの代わりにはならない。しかし、750kgの軽さと49psを使い切る面白さを考えれば、“隠れたライトウェイトスポーツ”と呼びたくなる一台だ。速さではなく、クルマを自分で動かす喜びを求める人にとって、これほど身近なMT車はもう多くない。
【画像ギャラリー】CVTのシフトセレクター部分はごっそりなくなる!? MT仕様とCVT仕様の内装を比べてみて!(5枚)画像ギャラリー







コメント
コメントの使い方