台風や集中豪雨での道路の冠水、それによって引き起こされるクルマの水没は、いまや毎年のように起こる災害となってしまっている。しかし同時に、事前にある程度予想できる災害でもある。水害への心構えを高根英幸氏にうかがった。
※本稿は2026年9月のものです
文:高根英幸/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2026年10月10日号
水没した時の影響と対処法
クルマの中に入れば台風でも雨風を凌げるから、「クルマでの移動は安全」と思いがちだ。
確かに間違ってはいないのだが、それはあるレベルまでの話。冠水などの水害ともなれば、クルマが足枷となったり、棺桶になってしまう可能性すらある。どの時点で「クルマを乗り捨て、身を守るか」ということは、早めに判断することが求められる。
「悪天候の時には出掛けない、後回しにできる用事は後日にする」というのは基本中の基本動作だが、だからといって自宅に籠もっていれば安全ということではないことに気付いてほしい。
それと同時に、自宅の防災能力がどれだけあるか把握されているだろうか。立地、建物の構造、電気設備の状態などが洪水時の被害には大きく影響する。クルマに関しては、駐車スペースの防災能力も重要だ。
タワマンで、駐車場も電気設備も地下の場合、防災能力が低いことは、過去の災害で判明している。だから一戸建てが安全かと言えば、立地や構造から大きな差があるから一概には言えない。
一方で天気予報の予測能力は高まっている。ただし天候は刻々と変化するので、それに基づいて予測も変化していく。
豪雨や台風などの荒天時には10分おきに雨雲レーダーの推移を確認するなど、その後に取る行動の判断基準をしっかりと確保しよう。
災害時のため複数の帰宅ルートを持っておく、過去データに基づくハザードマップの確認など、事前にできることはやっておくべきだ。天気予報などで豪雨が起こりそうな時には急遽、車両保険をかけるなどの対策も有効だ。
百年に一度レベルの災害という表現を聞いて、「今後百年は滅多に起こらない」と思うなら、脳内お花畑だと言うしかない。これまで経験しなかっただけで、今後は毎年襲ってくる可能性がある災害であることを知り、備える必要が出てきている。現代はそんな時代なのである。
【ちなみに】水没したクルマはどうなるのか?
エンジンが停止してしまった場合、それがマフラーからの浸水で排気ガスが堰き止められてしまったものなのか、エアクリーナーなど吸気系からの浸水なのかでも大きく変わってくる。
駐車中の水没であれば、エンジンを始動させる前にオイル交換してやることでダメージを防げる場合もあるが、大抵はエンジンを始動させてしまう。走行中のエンジン不動でも、マフラーからの浸水なら助かる可能性が高い。
室内や電装系が浸水してしまうと、クルマの大部分にダメージが及ぶので、修復は難しい。室内を洗浄して張り替えるとなると出費も嵩むし、査定時には水没車となってしまうので価値は激減する。エンジンだけなら載せ替えで復活するが、水没車の大半は廃車となるようだ。
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●高根英幸/メンテナンス、メカニズム、あらゆるジャンルのクルマの試乗といった豊富な専門知識と経験で、クルマの購入ガイド、ユーザー車検などについてマルチに執筆。最近注目を集めている「クルマと災害」についての造詣も深い
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