ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数480回を数える人気の連載だ。
今回は高速道路の制限速度アップで日本車の性能は高くなるのか、というテーマに迫ります。今回は国沢氏のアメリカでの運転体験をベースにレポートします。
文:国沢光宏/写真:トヨタ、Shutterstock
ベストカー2017年8月10日号『クルマの達人になる 第483回』より再録
■日本車に今後必要な性能をアメリカで実感
アメリカのフロリダでレンタカーすると、日産ヴァーサだった(日本のノートだと考えていい)。このクルマで国道95号線をデイトナに向かって走らせたら、改めて「日本車アカンかもしれません」と思った。
まっすぐ走らないのだ。正確に表現するなら、メーター読みで120km/hくらいまではなんら問題なし!
ところが国道95号線は流れの速さで有名。そもそも制限速度は約112km/hだが、乗用車は125km/h以上と思えるスピードで走っており、大型トラックを抜くべく追い越し車線に出ると、130km/hくらい出さなければド突かれてしまう。
我がヴァーサといえば、110km/hを超えたあたりから徐々にステアリング剛性を含めたフロントサスの正確性が怪しくなってくる。
さらにリアサスもアライメントが定まらなくなってくる。ちなみに10%程度の速度計誤差を考えたなら、メーター読み125km/hくらいで制限速度ピッタリ。なのに制限速度の巡航すらリラックスできないのだった。
■制限速度の上昇でシャシー性能が向上する!?
さて本題です。我が国も高速道路の制限速度を段階的に上げていく。とりあえず110km/hとし、問題なければ120km/hになるようだ。世界基準を考えたら当然の流れだと思う。
新型車のなかにはクルーズコントロールの設定速度を変えたモデルも出てきた。レクサスLC500は輸入車と同じく上限なし(実際は180km/hでリミッター)。スバルもメーカー曰く135km/h程度にするという。
ちなみにクルーズコントロールの上限設定速度、今後135km/hがスタンダードになるかもしれません。
制限速度が120km/hになると、速度計の誤差を見越せばメーター読みは135km/h程度になる。これは現在販売してるクルマのクルーズコントロール設定速度が115km/h程度なのと同じ理由。
メーター上で115km/h程度まで警察に捕まることがないのと同じく、今後クルーズコントロールの設定速度なら問題ないということだろう。間もなく始まる110km/h制限も、メーター上でプラス15km/hだと実車速で制限速度を少し超えるくらいだろう。
つまりやがて始まる110km/h区間はメーター上ではおおよそ125km/hでの巡航。120km/hになったらメータ上での135km/h程度での巡航が可能になるということだ。
ここで文頭に戻る。デキのよくないクルマでの120km/h巡航は快適じゃない。もちろんLC500や直進安定性のいいスバルなら余裕のよっちゃん。けど制限速度低いからとすべて「まぁいいか」にしてきた安価な日本仕様は相当厳しい。少なくともアメリカで乗ったヴァーサじゃ無理。
国沢光宏はナニが言いたいのか。やっと「日本でもシャシー性能を本格的に考えなければならない時代になる」ということです。全体的な底上げが必要になってくるだろう。サスペンションもダンパーも根本的なグレードアップ必要。
100km/hで安定して走れるクルマと、120km/hで安定して走れるクルマでは、必要とされるスペックからして違う。高速燃費も大切になるハズ。制限速度の120km/h化は、日本車の大きな進化を促すかもしれません。
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