コロナ禍で大変革の時!? 非搭載車はどうする!? 高速道路ETC専用化が抱える問題点

 2020年7月2日(木)に開催された第38回国土幹線道路部会において、国土交通省が一部料金所の係員が新型コロナウイルスに感染したことなどを受けて、高速道路のETC専用化を検討する方針を打ち出した。

 近年では93%はETCを装着しているというデータがあるが、カードを発行することができない、またはあえてしておらず、ETCを搭載していない人もなかにはいる。

 メリットもある全面ETC化だが、解決すべき課題もあるのではないだろうか? 今回は、高速道路行政に詳しいモータージャーナリスト 清水草一氏が斬り込む。

文/清水草一
写真/Adobe Stock(MP_P@Adobe Stock)、編集部

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■サービス低下は免れられず! 日本の高速道路独特の事情が問題となる

 国交省は、新型コロナウイルス感染症対策として、「料金所のETC専用化」(現金収受の有人ブース廃止)の方針で検討していくという。
現在ETCの利用率は、全国平均で約93%まで高まっている。しかも、料金収受員が新型コロナに感染し、業務にあたっていたブースが一時閉鎖された例もあった。

 そう聞けば、「ETC専用化もやむなしか」という気がしてしまうが、だまされてはいけない。

 ETC専用化しなくても、有人ブースは廃止できる。現在すでに相当数の料金所に料金精算機が設置されていて、ブースの無人化は徐々に進んでいるのだ。それをさらに拡充して、有人ブースを廃止すれば、新型コロナウイルス対策としては十分のはずだ。

国交省によると、2020年6月27日までに料金所係員9人の新型コロナ感染が確認されたという(moonrise@Adobe Stock)

 赤羽一嘉(あかば かずよし)国交相は、「感染症対策にかかわる新たな生活様式(利用者と係員の身体的距離の確保や電子決済の利用)の観点から、ETC専用化を検討する」と述べたが、それはひょっとして、料金所の完全無人化を意味するのだろうか?

 ブースの無人化は可能でも、料金所の完全無人化は難しい。ETCのトラブルなどでゲートが開かないことは間々あり、そのたびに係員が現場で処理に当たっているが、それができなくなるからだ。

 日本の高速道路料金徴収体制は、諸外国に比べると非常に厳格だ。理由は、日本の高速道路料金が断然世界一高いから。青森東ICから鹿児島ICまで連続利用すると約2000キロ。特大車の場合、ETCで7万6940円、現金なら11万円を超える。

 諸外国では、料金収受業務を簡素化するため、年間パスシールなどが導入されているが、チェック(たまの検問など)は当然甘くなる。甘くてもオッケーなのは、料金水準が日本よりはるかに低いからだ。日本の料金水準では、トラブル時の有人対応は必要で、すべてリモート化するには大きな投資が必要。しかもサービスレベルはかなり低下する。

ヨーロッパ(チェコやスイス)ではETCではなく、「ヴィニエット」と呼ばれるシールを購入すると1年間高速道路が乗り放題になる。ちなみに2019年時点での価格はチェコが約7000円、スイスが約4600円、オーストリアが約1万1000円となっている(moonrise@Adobe Stock)

 現状は、障がい者割引など、ETCでは対応できない割引制度もある。自衛隊が被災地におもむく際も、有人ブースでいちいち証明書を提示して通行している。一般レーンが消えた時、それらにどうやって対応するのか。料金所での人と人との接触を完全にゼロにするためには、あまりにも多くのハードルが待ち構えている。

 利用者側としては、ETC車載器を取り付けていないクルマが、高速道路から完全に排除されてしまうことが、なによりも問題になる。

 現在、日本の自動車保有台数は8233万台。ETCの新規セットアップ累計数は7100万台だが、廃車などに伴う廃棄数は不明なので、おそらく実働は6000万台くらいではないか。つまり、まだ約2000万台ものクルマに、ETC車載器が付いていないと推測される。

 いまだにETC車載器を取り付けない人は、かなり強固な動機を持っているだろう。「高速道路なんか使わない」とか、「カード類が大嫌い」とか。あるいは単に「めんどくさい」という人もいるはずだ。

 国交省は、ETC車載器取付の助成策や、ETCパーソナルカード(クレジッド機能がなく、クレジットカードを作れない人でも作れるETCカード)の保証金の大幅引き下げなどを課題として挙げているが、どんな普及策を打っても、非搭載車をゼロにすることはできない。

 ETC車載器の搭載を義務化したとしても、頑としてETCカードを作らない人は一定数いるはずだ。それも、「作れないから」ではなく、「私は作りたくない!」という積極的な動機を持って。

「そこまで言う人は高速道路を使わないでください」と言うのは簡単だが、それでも現状、7%もの利用者が非ETCで高速道路を使っているわけで、そこをバッサリ切り捨てるべきではないし、切り捨てる必要もない。

■ETC専用化のメリットよりもデメリットのほうが多い!

 国交省も、ETC専用化のためには、「誤進入した非ETC車のナンバープレートを読み取って、事後に徴収するシステムの整備が必要」と言っているが、それほどの投資をしてまで、なぜETC専用化を進めたいのか、その理由を聞きたい。そんなことをわざわざやるより、現在すでに現金やクレジットカードで支払える料金精算機があるのだから、それを拡充したほうがはるかに簡単ではないのか?

こちらが現在設置が進んでいる料金精算機だ。NEXCO中日本ではこのようなPR動画も作っている

「利用者の混乱が起こらないよう配慮し、例えばETC利用率の高い路線などから段階的に導入、拡大することを想定している」(国交省)という文言を読むと、新型コロナウイルスを口実に、無意味かつ延々と続く新たな業務を作り出して、縄張りを広げたいだけではないかという疑念も生じる。

 ETC専用化が実行されたあとは、非搭載車が高速道路入口で右往左往するだろう。実施後数年たっても、「ETC専用化なんて知らなかった」という人は出るに違いない。仮に料金所が完全無人化された場合、入口ブースで立ち往生したクルマは、どうやってUターンさせるのか。誰も対応してくれなければ、パニックになって逆走や迷走という事例が増える懸念がある。

 高速道路は、有料とは言っても公共設備だ。その利用を、事前に多くの準備が必要なETCに限定するというのは、得られるメリットに対してデメリットが多すぎるのではないだろうか。

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