2017年4月に創立100周年を迎えたスバル。北米市場を中心にますますその勢いを加速させているが、その人気の秘密とも言えるのが「安心・安全」と「走りの楽しさ」。この2つの柱を実現するスバルの技術は、世界トップレベルなのか? お家芸でもあるエンジン、4WD技術、そして安全性能に加え、ハンドリングとシャシー性能も加えた5つの項目ごとに比較する!!
文:斎藤聡/写真:編集部、SUBARU
ベストカー2017年11月10日号
車の基本に独自性が光るスバルの技術力
■エンジン性能
水平対向エンジンについては、量産ではポルシェとスバルしか存在しない。ポルシェはスポーツカー用、スバルは乗用車用なので、市販車を比較してしまえばポルシェに軍配が上がるのは仕方ないところ。
ただし、コンペティション(=競技)の世界でいうとWRC(世界ラリー選手権)でスバルはかつて一時代を築き、無類の強さ(速さ)を発揮した。これは言うまでもなく「市販」という足かせを外せば、世界を席捲するパフォーマンスを発揮できるだけの技術があるということにほかならない。
エンジン性能でスバルはぶっちぎりで世界のトップを行くとまではいわないまでも、世界のトップレベルに追従するだけの技術力があるのは間違いない。
■ハンドリング
この実力を試すには氷盤路で旋回させるとよくわかる。インプレッサからフォレスター、レガシィ、そしてWRXまで、スバル車(4WD)は例外なく弱アンダーステアで、ドリフトする場合でも内側にややハンドルを切りながらドリフトを持続する。
つまり、滑りやすい路面でも弱アンダーで安定した姿勢を保てるようにセッティングされている。
これは自動車メーカーとして評価に値する見識で、ハンドリングのシャープさだとかアジリティ(=機敏さ)といった味つけの前に、本来、操縦性はどうあるべきか、という哲学が必要だと思う。その点でスバルは優秀であるといえる。
■シャシー性能
感心するのは、国内自動車メーカーで唯一年次改良を行い、操縦性に関わる部分に変更を加えていること。そうやって毎年シャシーを進化させてきた。
例えば、レガシィとインプレッサは長い間プラットフォームを共用しながら、2年間ズレているモデルチェンジのタイミングを利用し、交互に前半分、あるいは後ろ半分を進化させながらシャシーの熟成や進化を図ってきた。
先に発表されたスバル グローバル プラットフォーム(SGP)は、次の世代に向けて開発された意欲的なシャシー。その出来はフォルクスワーゲンのMQB(ゴルフ等に採用される基幹プラットフォーム)に匹敵するんじゃないかというほど秀逸だ。
象徴の技術『四駆&安全性能』は世界トップレベルか?
■4WD性能
スバルの4WDのすばらしさは、変わらない操縦性に尽きる。
アウディは、逆にさまざまなアプローチを試みながら、操縦性の進化を図っている。フロントデフの位置を前方に移動し、重量バランスを整え、そのためにシンメトリカル4WDをやめた。最新モデルは縦置きエンジンでもセンターデフを使わないトランスファー式となった。
技術的なアプローチのアグレッシブさではアウディが勝る。けれども、首尾一貫してシンメリトカル4WDにこだわり、弱アンダーの操縦性を守る、その頑固さとそこから作り出される素直な操縦性という点ではスバルが勝る。
■安全性能
アイサイトは、少し前まで世界的に見ても、ぶっちぎりで優秀な運転支援システムだった。アイサイトの“ぶつからないブレーキ”は、依然としてこのレベルに達していないものが少なくない。
さすがに最新の運転支援システムは、カメラ、ミリ波レーダー、ソナーなどを駆使して、各社の開発競争が激化しているが、そもそもスバルのアイサイトが出ていなかったら、現在の運転支援技術のレベルはもっとずっと低かったのではないか。そのくらいスバルの安全技術は優れている。
ちなみに現在のアイサイト・ツーリングアシストも競争のトップ集団にいるが、優劣に関しては一長一短ある。
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スバルといえば、「水平対向エンジン」、「4WD技術」、「安全性能」というイメージが強い。
こうしてみると、改めてスバルが、その象徴的な技術で世界トップレベルにいることがわかる。こうした地道な技術的進化の積み重ねこそスバルの強みで、マツダと並び、自動車ファンに評価される所以なのだ。
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