■バージョンR追加も質実剛健を旨とした5代目
1995年10月のフルモデルチェンジで登場した5代目は、先代同様に新たなベーシックカーが目指される一方で、RVブームの影響もあり、小型車の在り方も問われだした頃である。
そのため、ミラージュは、セダンのサイズこそ維持されたが、3ドアハッチの全長を大胆にも80mmも短縮され、小回りの良さと軽快さが強調された。
驚異の小排気量V6は、スープアップを受け、1.8Lへと進化し、引き続きセダンに搭載。技術的な目玉となるのは、学習機能付のAT「INVECS-IIスポーツモード4AT」である。
これはドライバーの運転スタイルを学習し、シフトの最適化を図るもので、走る喜びを感じるオートマという新価値が加わった。クーペのアスティは、2か月遅れとなる1995年12月にフルモデルチェンジ。
よりスポーティさが高められ、スペシャルティクーペらしいスタイリングが目指された。通常の仕様に加え、4代目同様に、1.6LのMIVECエンジン搭載のスポーツグレード「RX」を継承。
さらに1998年10月には、最強のアスティとなる「RXバージョンR」も追加。最高出力175ps/7750rpmの高回転がユニットに加え、強化サスペンション、クイックステアリング、OZ製アルミホイール、大型リヤウィングなどの装備していた。
しかし、シビックタイプRが幅を利かせていたこと、身内にスーパーセダンのランエボが存在したことなどから、激レアな車となってしまった。
RVやミニバンブームにより三菱車のラインアップは充実し、新たな価値を創造した一方で、実直な進化を続けたミラージュの存在意義を薄めてしまう。その結果、2000年にてミラージュシリーズの生産を終了。
事実上、ランサーセディアシリーズに統合される。その名こそ、1999年誕生の小型トールワゴン「ミラージュ・ディンゴ」が受け継ぐもこちらも一世代で消滅。ミラージュの名は、長く眠りにつくことになる。
■世界戦略車としてよみがえった現行型はどうなる
時は流れ、2011年のこと。三菱は東京モーターショーで新たな世界戦略車を発表。そのクルマこそ、復活を遂げた6代目ミラージュであった。
かつてのライバルの多くが消滅した今、ミラージュのポジションもエントリーコンパクトへと転向。単なる経済車ではなく、今後拡大する新興国ニーズを先読みした次世代エントリーコンパクトへと生まれ変わった。
その姿勢を示すべく、TVCMでは、唐沢寿明が扮する三菱ディーラーの唐沢店長が、変身ポーズで「乗って!ミラージュ」とアピール。低価格、低燃費、コンパクトが売りなのは良かったものの、実用一直線のコンサバな雰囲気が、日本市場ではイマイチ受けず……。そのため、改良を重ねることで世界戦略車としての実力を高めてきた。
その最新作が、2020年4月に登場したビックマイナ―チェンジモデルだ。実は、ミラージュにとっては2度目のフェイスリフトとなる。初回となる2015年12月のマイナーチェンジでは、グリルを追加するなどビジュアル的な上質さを与えながら、走りの質感も磨く改善を図った一方、ミラージュらしさは薄かった。
その点、最新型は、若々しさと元気さに溢れる内外装が歴代ミラージュの伝統的な魅力と重なる。名前だけでなく、その在り方でもミラージュらしさを追求し、原点回帰を図ったのが、最新のミラージュなのだ。
【編集部まとめ】
6代にもわたるミラージュの歴史。実用車として究極を目指し、時にはスポーティに進化を続けてきた。とはいえ現行型は登場からすでに10年が経とうとしており、ライバル勢と比較するとクルマ自体に新しさはない。
もちろん国内に限れば販売台数は苦しく、ディーラーでもマイナーチェンジ後の試乗車はほとんど用意されていないほど。
かつて日本のクルマ好きを唸らせ、そしてドキドキさせたミラージュ。きっと今後も世界戦略車としての進化を続けるはずだが、40年以上の歴史ある車名だけに世間をあっと驚かせる三菱らしいコンパクトへの進化を期待したい!!
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