ダウンサイジング需要により、再び脚光を集めている小さいクルマたち。主役となるのは軽自動車だが、ひとクラス上のコンパクトカーたちも大いに健闘している。
しかも2020年は、カテゴリーをけん引するトヨタ・ヤリスやホンダ・フィット、そして日産ノートまでがフルモデルチェンジを迎え、市場も大きな刺激を受けた。
その陰で、密かにビッグマイナーチェンジを実施したクルマがあった。それが三菱ミラージュだ。正直、地味な存在であることは否めないが、今や国産コンパクトの最古参でもある。それだけに名車も多く存在し、多くの人たちに愛されてきた。そんな歴史と伝統を振り返る。
【画像ギャラリー】40年の歴史を生き抜いた!! 歴代ミラージュの全貌を見よ
文:大音安弘/写真:三菱自動車
■革新的機構満載で三菱らしさ全開の初代
ミラージュの世界初披露は、1977年の東京モーターショーが舞台に。その名は、フランス語で「神秘・ロマンチック・蜃気楼」を意味するという、なんともお洒落なクルマであった。そこには、これまでの三菱車のイメージを打ち破る狙いもあったのだろう。
新しい3ドアハッチバック車のスタイリングは、流線型を意識した従来のものとは一変し、直線的を強調したものに。ボディの凹凸を抑えたフラッシュサーフェイスや空気抵抗を抑えるスラントノーズなどの特徴が先進的なイメージを与えつつ、広いガラスエリアによる視界の良さという高い安全性も重視していた。
ミラージュは、当時、流行のFFレイアウトを取り入れた三菱初のFF車であった。最新のFR用エンジン(1.2Lと1.4Lのエンジン)を横置きに搭載するには、回転方向を合わせる逆転ギアの追加が必至であった。
しかし、単なる仕様変更に終わらせなかったのが、面白いところ。その機構を副変速機として活用することで、「パワー」と「エコノミー」の2つのレンジの切替可能とした「スーパーシフト」として開発。
4速MTに2つのレンジを組み合わることで、実質的には8速となるMTにしてしまった。このため、FF車なのに、シフトレバーが2本も備わり、初めて乗った人は、きっとトマだったに違いない。
1978年9月には、ロングホイールベース化を図った5ドア仕様を追加。リヤシートにリクライニング機構を設けるなど後席快適性も重視された。さらに79年9月には、スポーティな1.6Lエンジンと足回りの強化を図った「GT」と1.4L車にATを追加され、モデルの多様化が図られた。
1982年2月にマイナーチェンジを実施。フルモデルチェンジでもないのに、なぜか「ミラージュII」と名乗る。これは内外装を刷新し、時代が求めるモダナイズされたことを意味するものであった。性能面では、3ドアハッチに高性能な1.4Lターボを追加。
日本車初の気筒休止機能を持つ仕様も用意された。そして、4ドアセダンが登場したこともトピックである。余談だが、ミラージュセダンは、仕様違いのランサー・フィオーレとしてもデビューしており、当時のランサーには、FRの「EX」とFFの「フィオーレ」の2種類のセダンが存在した。なんとも贅沢な話である。
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