「シエンタ クロスオーバー」が登場!空前のSUV人気ながら、なんでもクロスオーバー化することは正解か?

■勝てば(売れれば)官軍! メーカーもユーザーもWin-Winのクロスオーバー化

 一方では、トヨタ『クラウン』の次期型がSUVになるという情報まで出はじめたのを目にした人も少なくないことだろう。実際にどうなるのかはまだわかるはずもないが、こうして報じられたくらいなので何かしら新しい動きはあるものと見てよさそうだ。

ベストカー(2021年1月10日号)でお伝えした次期クラウンSUVの予想CG。伝統の4ドアセダンが消滅してしまうとすると、さびしい限り(予想CGイラストはベストカーが製作したもの)
ベストカー(2021年1月10日号)でお伝えした次期クラウンSUVの予想CG。伝統の4ドアセダンが消滅してしまうとすると、さびしい限り(予想CGイラストはベストカーが製作したもの)

 かつて似たような成り立ちで世に出た日産『スカイラインクロスオーバー』は、北米ではそれなりに人気を得たものの日本ではあまり受け入れられなかったが、当時とは時代が違うことだし、クラウンの名がつけば注目度も高まることはいうまでもない。

 すでに豊富にSUVをラインアップしているトヨタが、さらに新しくSUVの車種を増やすとなると、それなりに意義のあるものとなるはず。はたしてどんなクルマが出てくるのか興味深いところだ。

 クロスオーバーがこうして増えるのは、なんら不思議なことではない。売れているものにならうのは当然のこと。SUVの要素を盛り込むことで人気が高まり売れ行きがよくなるのなら、誰だってそうする。

 クロスオーバーと呼ばれる中にも程度があり、前出のお手軽なタイプを「中途半端」と評する向きもあるが、これで十分と感じている人が少なくないことは販売の動向も証明している。

 架装が増えてタイヤなどが大きくなればそのぶん販売価格は割高になるが、それでもそうしたほうが売れて儲かるのならやらないわけがない。ユーザーもそれを望んでいるわけで、メーカーにとってもユーザーにとっても好循環といえる。

スカイラインクロスオーバー
2008年に北米で「インフィニティEX37」との車名で販売開始されたが、2009年に「スカイライン クロスオーバー」の名称に変更し日本で発売された

 こうした類いのクロスオーバーの価値は、このルックスを楽しめることにつきる。それだけで十分に存在価値はある。機能面での優位性は基本的にはない。走破性を高めるデバイスが装備されているケースもあるが、それはクロスオーバーでなくてもできるのをベース車ではやっていないだけの話なので、クロスオーバーの特権とはいえない。

■いいことばかりじゃない! クロスオーバー化で悪化する性能も……

 ただし、こうしたクロスオーバーにはベース車にはないデメリットがあるかもしれないことも一応お伝えしておこう。走りについてベース車とまったく変わらないケースもあるが、そうではないケースも多いのだ。

 そもそもSUVというのは、乾燥舗装路を走るには不利なことばかりだ。ベース車に対して、大径タイヤを履かせたり地上高を上げたりするとどういうことが起こるか、基本的な例をいくつか挙げると、タイヤ径が大きくなるとバネ下重量が重くなり走りに影響をおよぼすほか、ステアリングの切れ角を確保しづらくなり小回りが利かなくなる。

 さらには地上高を上げるともちろん重心高も上がり、ロールなどの挙動が大きく出やすくなる。それを抑えるためにスプリングやダンパーやスタビライザーなどを強化して手当するケースもあり、その場合は乗り心地の悪化を招いたり、挙動が不自然になったりする。

 少々難しい話だが、これらの根本的な要因は地上高を上げることに対してサスペンションジオメトリーが適切でなくなる点に問題がある。重心高が高くなりサスペンションアームの角度が変わり、ロールセンターとの位置関係が変わると走りにも大なり小なり影響を及ぼす。とにかく本来の走りができなくなるとイメージいただけばよいかと思う。現行型はそれほどでもないが、従来型の『XV』と『インプレッサ』はまさしくそれが顕著に見受けられたものだ。

現行XVはSGP採用により、車高の高いSUVでも最適なセッティングができるようになった。さらに2020年10月8日のモデルチェンジで、サスペンションが改良され走行性能が向上している
現行XVはSGP採用により、車高の高いSUVでも最適なセッティングができるようになった。さらに2020年10月8日のモデルチェンジで、サスペンションが改良され走行性能が向上している

 燃費についても、SUVテイストの架装によりわずかでも重量が増したり車高が高くなったりすると、燃費面でよい影響があるわけがない。架装したデザインそのものが空力に影響する可能性もある。たとえばホンダの『現行フィット』は5タイプがラインアップする中でも、若干ではあるが「クロスター」の燃費公表値が他モデルを下回っている。

 むろん地上高が高いだけでも見晴らしがよかったり、未舗装路を走りやすいなどよい面はいくつかあるが、ごく普通に走るぶんには性能面でよいことは基本的にはないといえる。それでも多少のネガは考えられても大半は許せる範囲であり、SUVテイストを好む人にとってはあまり関係のない話に違いなく、SUVテイストの架装はまさしく「付加価値」として、そのクルマ商品性そのものと化す。 なくても問題ないが、こうして多くの人に選ばれるようになったのは、あったほうがよいと認識する人がそれだけ増えたということだろう。

【画像ギャラリー】はたして国内販売はあるのか? 台湾で発表されたシエンタ クロスオーバーを写真をでチェック!!

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