■エンジンに表れるアルピナの特長
さてこのM3に対してアルピナ B3は、現行の新しい3シリーズをベースとしている。しかもAWDだ。M3はFRの後輪駆動。さらに、M3には7速DCT(ツインクラッチ)が採用されているがB3は8速ATなのだ。
搭載されるエンジンは、両モデルともBMWの十八番ともいえる直噴直列6気筒ツインターボ。
3シリーズの多くにはツインスクロールターボという表記のエンジンが在るが、こちらはシングルターボである。したがってM3に搭載されるのは中身も異なるが根本的に2個のターボを装着したハイパワーエンジンだ。
このエンジンをベースとしたB3に搭載される3.0L直噴直6ツインターボは462ps/700Nmを発生する。ちなみにベースとなる次期型M3搭載エンジンは480ps(コンペティションは510ps)/650Nmと報告されている。
B3ではアルピナ流にターボやマネージメントプログラムを変更している。またクーリングシステムも強化されている。パワーは若干落とされているがB3では逆にトルクがリッチになっている。
その加速感はアクセルの踏み加減に応じてリニアに変化するが、一般道での走りでは全く過激性を感じさせず、要求したトルクを即座に低回転域から発生しストレスがない。
最大トルクの700Nmは2000rpmですでに発生しているが、数値の割にとても扱いやすい。逆にフルスロットルにすれば、強烈な加速感に豹変する。ちなみに0~100km/h加速は3.8秒だ。
■M3ではここまでの乗り心地と静粛性は望めない
試乗会場となったのは福島県有数のワインディングが存在する裏磐梯。まず、走り始めて感じたのが室内の静粛性だ。いわゆる素の3シリーズにも試乗しているが、ここまで静粛性は高くない。
さらに、乗り心地も非常に快適でバネ下の軽量化を目的に新しく開発された20本スポークの20インチ鍛造アルミホイールを履くが、エアボリュームの少ないタイヤなのにお尻への角張った突き上げが皆無。
19インチ(鋳造)ホイールも用意されるが、逆に20インチの乗り心地に好感が持てる。裏磐梯の路面は寒冷地特有の路面の荒れが多く、乗り心地評価にはアゲインストな環境だが、B3のブッシュ類やサスペンションそのもののコントロールが優雅で高級車そのもの。
M3ではここまでの乗り心地と静粛性は望めない。その代わりにサーキットでの限界域性能に長けているわけだ。
ではB3の限界特性はどうなのか? まずB3には現行3シリーズと同じ電子制御の減衰力可変ダンパーが採用されている。もちろんその減衰力特性もアルピナ社による手が入れられている。前段に触れた乗り心地も専用ダンパーマネージメントによるところ大なのだ。
ドライブモードをスポーツ+に設定するとダンパーがハードになり腰がしっかりとする。しかし、予想したほど硬くはならない。突っ張り感はなく路面の凸凹をなぞるように吸収し、ロールのスピードをほどよく制御する。
ステアリングを切ったときの応答感は素早いが、おもむろにノーズが向きを変えることはない。切り足していくにしたがって深い操舵角まで正比例に曲がり込む。実にわかりやすい。
高い速度からブレーキングで前荷重、ブレーキを少し残しながらコーナーに飛び込んでみる。リアの安定感がスバラシイ! B3のAWDは、現行3シリーズのxDriveをベースにし、リアにLSDを採用。さらに、トルク配分をよりリア寄りにコントロールするセットだ。
AWDの場合、タイトコーナーなどで深いステアリング操作をおこなうと、どんどんアンダーステアが顔をのぞかせるものだが、そのようなキャラは感じられない。リアは安定して粘っているがおせっかいではない。とにかく前後のグリップバランスが素晴らしく、限界レベルでも心拍数はさほど上昇しない。
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