ダイハツ ビーゴがSUVブーム前夜で消えた理由【偉大な生産終了車】

ダイハツが送り出した本格的4WD! 佳作 ビーゴが一代限りとなった消えた理由【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ ビーゴ(2006-2016)をご紹介します。

【画像ギャラリー】出てくるのがもうすこし早ければ…!? ダイハツ ビーゴを30枚の画像で振り返る

文/伊達軍曹、写真/DAIHATSU


■デザイン・居住性・走破性・ユーティリティ…あらゆる点で世界一を目指したコンパクトSUV

 SUVといえども「街乗り重視」なものがすでに中心となっていた2006年。

 あえて1.5L直4エンジンを縦置きし、メカニカルセンターデフ方式のフルタイム4WDを介し四輪を駆動するという硬派な作りを持った小型SUVとして登場。

 その後10年間は頑張ったものの、「よりライトなもの」が好まれる世の中の風潮にはあらがえず、2016年をもって消滅したモデル。

 それが、ダイハツ ビーゴです。

 ダイハツ ビーゴはダイハツとトヨタが共同開発したコンパクトSUV。まずは2005年の東京モーターショーで発表され、翌2006年1月に発売されました。

ダイハツ ビーゴ(2006-2016)。名前の由来は英語で「Be→go*」で、「Be(ある・いる)」から「Go(出る・行く)」への変化を意味。生活や意識に変化をもたらす積極的な行動できるクルマをイメージ *「→」は右向きの黒三角

 トヨタブランドで販売されるOEM供給車「トヨタ ラッシュ」も、このとき同時に発売されています。

 ボディサイズは全長3995mm×全幅1695mm×全高1705mmで、ボディ構造は「ビルトインラダーフレーム式モノコックボディ」。

 これは通常のモノコックボディに屈強なラダーフレームを組み合わせて一体化させた強固なものです。

 そのビルトインラダーフレームに組み合わされた4WDシステムは、俗に言う「生活四駆」ではなく、メカニカルセンターデフロックの付いた本格的なフルタイム4WD。

悪路走破性はもちろん、発進加速性能や高速安定性に優れたフルタイム4WD、滑りやすい路面や雪道で威力を発揮する最新機能を採用した「VSC=車両安定制御」を装備

 ぬかるみなどにハマった場合には、インパネのスイッチで前後輪を直結状態にすることができます。

 またメーカーオプションとして装着された「VSC(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)」には、4WDのAT車の場合は「DAC(ダウンヒル・アシスト・コントロール)制御&ヒルスタート・アシスト・コントロール機能」も備わっています。

 搭載エンジンは同時期のトヨタbBにも採用された最高出力109psの「3SZ-VE型」1.5L直4DOHCで、駆動方式は前述してきたフルタイム4WDのほかにFRを用意。そしてトランスミッションは4速ATを基本としつつ、4WDでは5MTを選択することもできました。

 以上のような成り立ちで登場したダイハツ ビーゴおよびトヨタ ラッシュは、ビッグヒットを記録する類の車ではありませんでしたが、雪深い地方などではそれなりに重宝され、2008年11月のマイナーチェンジを経て2016年まで製造され続けました。

 しかし同年2月には残念ながらオーダーストップとなり、3月末には販売を終了しています。

■本格的な4WDであったゆえに!? ビーゴ/ラッシュが1代限りとなった理由

 ナリは小さいが、実はけっこう本格的な4WD車であったダイハツ ビーゴ/トヨタ ラッシュが、10年は続いたものの、結果として1代限りで終わってしまった理由。

 それは「本格的な4WDだったからこそ」ということになるのでしょう。

 前述のとおり、雪国などではまずまず愛好されたビーゴ/ラッシュでしたが、「雪や悪路をもとともせず走れる小ぶりな車」というジャンルには、スズキのジムニーおよびジムニーシエラというスーパースターがいます。

 軽自動車をベースとしているジムニーシエラと比べて、ビーゴ/ラッシュは「登録車ベースゆえに車内が広い」というアドバンテージはありますが、それだけで超強敵であるジムニー軍団を撃破できるはずもありません。

 当然ながら「日常的に悪路を走るのではなく、たまに趣味としてオフロードや雪道に行く」という人にもそれなりに買ってもらわないことには、ビジネスとして成り立たないのです。

 しかしご存じのとおり日本におけるいわゆるクロカンブームは、1990年代半ばにはもう陰りを見せていました。

 そしてその後は、本格的で屈強な「クロカン」ではなく、舗装路に強いタイプの4WD SUVや、何なら形はSUVなのですが、駆動方式は完全なFFであるライトなSUVが主流となっていきました。

リヤシートを格納することにより、755Lのラゲッジスペースを実現。撥水フルファブリックシートなどアウトドアに嬉しい各種装備も

 そうなると当然、ビーゴ/ラッシュに採用された本格的な機能や部品は「余計なもの」「ムダなもの」でしかなくなります。

 99%ぐらいは舗装された道だけを走って、雪道や砂利道を走るのはせいぜい1%ぐらいのことであるならば、「生活四駆」で十分なのです。何ならばFFでいいのです。というかむしろFFのほうが燃費が良いため、好まれるでしょう。

 その結果としてダイハツ ビーゴおよびトヨタ ラッシュは、さすがにジムニー軍団に取って代わることはできず、かといって都市部に住むライト層に受け入れられることもなく、約10年の“生涯”を終えました。

 そして――直接の後継車ではないのですが、間接的な後継モデルといえるダイハツ ロッキーとトヨタ ライズは今、ご承知のとおりよく売れています。

 聞くところによれば、両モデルにおけるFF車の比率は7割から8割ほどに上るそうです。

 そのことを、「本格」を目指したビーゴ/ラッシュが草葉の陰でどう思っているのか、筆者にはわかりません。

 しかし、あえて本格を目指し、そして散っていったビーゴ/ラッシュのことは――いつまでも覚えていたいと思います。

■ダイハツ ビーゴ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1705mm
・ホイールベース:2580mm
・車重:1180kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1495cc
・最高出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:14.4kgm/4400rpm
・燃費:15.2km/L(JC08モード)
・価格:181万6500円(2006年式 CX 4WD 5MT)

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