ダイハツ ビーゴがSUVブーム前夜で消えた理由【偉大な生産終了車】

■本格的な4WDであったゆえに!? ビーゴ/ラッシュが1代限りとなった理由

 ナリは小さいが、実はけっこう本格的な4WD車であったダイハツ ビーゴ/トヨタ ラッシュが、10年は続いたものの、結果として1代限りで終わってしまった理由。

 それは「本格的な4WDだったからこそ」ということになるのでしょう。

 前述のとおり、雪国などではまずまず愛好されたビーゴ/ラッシュでしたが、「雪や悪路をもとともせず走れる小ぶりな車」というジャンルには、スズキのジムニーおよびジムニーシエラというスーパースターがいます。

 軽自動車をベースとしているジムニーシエラと比べて、ビーゴ/ラッシュは「登録車ベースゆえに車内が広い」というアドバンテージはありますが、それだけで超強敵であるジムニー軍団を撃破できるはずもありません。

 当然ながら「日常的に悪路を走るのではなく、たまに趣味としてオフロードや雪道に行く」という人にもそれなりに買ってもらわないことには、ビジネスとして成り立たないのです。

 しかしご存じのとおり日本におけるいわゆるクロカンブームは、1990年代半ばにはもう陰りを見せていました。

 そしてその後は、本格的で屈強な「クロカン」ではなく、舗装路に強いタイプの4WD SUVや、何なら形はSUVなのですが、駆動方式は完全なFFであるライトなSUVが主流となっていきました。

リヤシートを格納することにより、755Lのラゲッジスペースを実現。撥水フルファブリックシートなどアウトドアに嬉しい各種装備も
リヤシートを格納することにより、755Lのラゲッジスペースを実現。撥水フルファブリックシートなどアウトドアに嬉しい各種装備も

 そうなると当然、ビーゴ/ラッシュに採用された本格的な機能や部品は「余計なもの」「ムダなもの」でしかなくなります。

 99%ぐらいは舗装された道だけを走って、雪道や砂利道を走るのはせいぜい1%ぐらいのことであるならば、「生活四駆」で十分なのです。何ならばFFでいいのです。というかむしろFFのほうが燃費が良いため、好まれるでしょう。

 その結果としてダイハツ ビーゴおよびトヨタ ラッシュは、さすがにジムニー軍団に取って代わることはできず、かといって都市部に住むライト層に受け入れられることもなく、約10年の“生涯”を終えました。

 そして――直接の後継車ではないのですが、間接的な後継モデルといえるダイハツ ロッキーとトヨタ ライズは今、ご承知のとおりよく売れています。

 聞くところによれば、両モデルにおけるFF車の比率は7割から8割ほどに上るそうです。

 そのことを、「本格」を目指したビーゴ/ラッシュが草葉の陰でどう思っているのか、筆者にはわかりません。

 しかし、あえて本格を目指し、そして散っていったビーゴ/ラッシュのことは――いつまでも覚えていたいと思います。

■ダイハツ ビーゴ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1705mm
・ホイールベース:2580mm
・車重:1180kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1495cc
・最高出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:14.4kgm/4400rpm
・燃費:15.2km/L(JC08モード)
・価格:181万6500円(2006年式 CX 4WD 5MT)

【画像ギャラリー】出てくるのがもうすこし早ければ…!? ダイハツ ビーゴを30枚の画像で振り返る

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