俳優、そして映画監督として有名なクリント・イーストウッドが監督・主演した車名をタイトルにした映画、それが『グラン・トリノ』だ。
1972年発売の古いクルマだけに、映画を見ていなければこのタイトルが車名とは気が付かないかもしれないが、美しいクーペボディのフォード車だ。
おうち時間をぜひこの名作映画で楽しんでもらいたい。
文/渡辺麻紀、写真/ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
【画像ギャラリー】イーストウッドもフォードも、古いけどかっこいい!! 映画『グラン・トリノ』を観る!!
■当時78歳のイーストウッドが監督・主演した心にしみる作品
ハリウッドの生きる伝説、クリント・イーストウッド。イタリアに渡って撮った『荒野の用心棒』(64)で知られるようになり、『ダーティハリー』シリーズ(71~88)で大ブレイク。
その後、監督も兼ねるようになって『許されざる者』(92)と『ミリオンダラー・ベイビー』(04)で二度、アカデミー監督賞を受賞した。
今年でもう91歳と高齢だとはいえ、10月には新作『Cry Macho』の公開が予定されている現役バリバリの監督&俳優だ。
そんな彼が08年、78歳のときに監督&主演した映画が『グラン・トリノ』。フォード社の名車と言われる72年製グラン・トリノの名前をタイトルに冠した心にしみる良質の人間ドラマだ。
グラン・トリノは、イーストウッド扮する近所で評判の偏屈じいさんコワルスキーが大切に大切にしているヴィンテージカー。いつもピッカピカに磨き上げ、その神々しい姿を眺めながらひとりビールを飲むのが至福の時。ガレージではシルクのカバーで守るという念の入れようだ。
コワルスキーはデトロイトのフォード自動車工場で50年勤めあげ、「この車のステアリング・コラムは自分の手で取りつけた」と自慢げに語るのだから、グラン・トリノは彼のこれまでの人生の証であり誇り。
折り合いの悪い自分の息子が、愛するフォードではなくトヨタのランドクルーザーに乗っているのがまったく気に入らないのも当然といえば当然だ。
物語が動き出すのは、自分たちが乗っているホンダシビックより断然かっこいいグラン・トリノを盗もうとするストリートギャングたちが現れてから。
彼らはコワルスキーの近所に暮らすアジアの移民で、少数民族モン族のティーンエイジャーたち。じいさんを煙たく感じていた彼らが、気の弱い親戚の少年タオにコワルスキーの愛車を盗ませようとするのだ。
この窃盗未遂事件をきっかけに、タオに「男としての生き方」を教え込むことになったコワルスキーはまず、グラン・トリノの洗い方や磨き方、メンテナンスの仕方を伝授する。美しく整頓されたガレージにも彼の生き方がにじみ出ているのが、なんだか眩しかったりもするのだ。
イーストウッドはこの車についてこう語っている。
「まさにグラン・トリノは共演者だよ。コワルスキー自身を象徴している。彼はタオという若者に、この車を通して仕事に対する姿勢も教えている。私は、タオへの一番の贈り物は、仕事に対する情熱だと思っているんだ」
映画は、そういう彼の「生き方」や「教え」がさまざまなかたちで表現され、最後には大きな感動をもたらせてくれる。この美しいラストは、本当にイーストウッドらしいと思ってしまった。
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