1台のフォードが彩る物語 C・イーストウッド監督・主演『グラン・トリノ』を観る!!


■人生という道を車と共に走り続ける

グラン・トリノの盗難未遂がきっかけで、近所のモン族の一家と交流を持つ

 フォードつながりで話が飛んでしまったが『グラン・トリノ』である。

 本作でのグラン・トリノはコワルスキーの分身のような存在として登場しているからこそ、その名をタイトルにしているにもかかわらず、コワルスキーがこの愛車をドライブするシーンは実は一度もない。

 普段使っているのはフォードの年季の入ったトラックで、グラン・トリノは後生大事にガレージにしまい込んでいるのだが、しかし、ワンシーンだけ爽快な走りを見せる。

 すべてはこのシーンのためにあったのかと思わせる美しさ。大げさに言ってしまえば、コワルスキーの素晴らしい生き方をその美しい走行姿で表現しているのだ。

 カームービーも、カーアクションも枚挙にいとまがないほどたくさん作られているが、主人公と車の存在がこれほどシンクロした作品も珍しい。

ぎこちなくではあるが、少しずつ心を開いていくコワルスキー

 イーストウッドも思い入れが強かったのだろう、何とエンディングに流れる主題歌を作詞し、その一部まで自ら歌っている。

 これまで映画で歌声を披露したことは何度かあるが、主題歌を歌ったのは、おそらく『センチメンタル・アドベンチャー』(82)に続き二度目、何と25年ぶりだ。「オレのハートが宿るグラン・トリノ」とハスキーなシブい歌声で愛車への深い想いを囁くのだからたまらない。

 その音楽を作曲したのはイーストウッドの息子カイル。ジャズを愛する父親のDNAを引き継いだジャズミュージシャンで、父親の映画の多くのサウンドトラックを担当している。ということは、イーストウッド父子がグラン・トリノに愛を注いだことになる。まさに車冥利に尽きる、ではないか。

●解説

 愛する妻に先立たれ、愛犬デイジーと暮らす偏屈じいさんウォルト・コワルスキー。

 このところ、近所の家はアジアからの移民ばかりとなり、コワルスキーは面白くない。そんなとき、愛車グラン・トリノをきっかけに隣の移民一家のひとり息子タオの面倒を見ることになる。はからずもそれは彼の人生を大きく変えることになるのだった。

 コワルスキーは朝鮮戦争に従軍した経験があるという設定で、そのときの銃をちゃんとメンテナンスして今でも使っているのだが、『運び屋』も同じく朝鮮戦争経験者という設定だった。

 もっと過去の作品だと『サンダーボルト』(74)や『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦争』(86)の主人公も同じ。

 そういうこともあってなのか、実はみんな同じキャラクターなのでは? と考察するイーストウッド・ファンもいるくらいだ。そういう類似点を見つけながら彼の映画をもう一度観直すのは、なかなか楽しい経験になるだろう。

『グラン・トリノ』
ブルーレイ ¥2,619(税込)/DVD ¥1,572(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

【画像ギャラリー】イーストウッドもフォードも、古いけどかっこいい!! 映画『グラン・トリノ』を観る!!

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