■EVになったジープ『マグニート』気になるオフロード性能を考察してみる
マニアが気にするのは、ガソリンエンジンを積む現行のラングラーとの優劣だろう。舗装路ではモーターのほうが力強く感じるはずである。モーターは一気にパワーとトルクが立ち上がるから、気持ちいい加速を見せるだろう。同じグループのフィアットはすでに『500e』を販売しているし、シトロエンとプジョーもEVの経験が長い。だからモーター関連のトラブルはないと思われる。
ちょっと気がかりなのが6速MTだ。トランスファー(副変速機)の切り替えはワンタッチ式だろうから心配は無用だ。だが、モーターは一気にパワーとトルクが盛り上がるから、クラッチへの負担が大きい。ゆっくりクラッチ操作していると、クラッチが滑るようになり、寿命が一気に縮む。このあたりの対策はきちんとしているはずだが、ちょっと心配だ。EVの魅力である息継ぎのないシームレスな加速特性も、変速操作が必要なMTだと損なわれてしまうかもしれない。強力な回生ブレーキを得られるように、減速度を変えられる強弱のセレクター(パドルシフト)も欲しい。
バッテリーをフロアやモーター下に敷き詰めているから重心は低く、重量バランスもよくなっているからコーナリング性能やハンドリング性能は現行のジープよりいいと思われる。だが、気になるのはオフロードや雪道での実力だ。ラングラーは道なき道を踏破できる高い実力の持ち主である。バッテリーケースを防水しているとはいえ、渡河性能が心配だ。現行モデルは水深750mmでも渡り切れるが、EVはどうだろう。
シャシーは、ジムニーのようにフレーム構造と4輪リジッドのサスペンションを受け継げるのかも興味のある点だ。4WDのメカニズムは電子制御式になりそうだが、ハイ/ロー切り換えの副変速機は受け継がれるのだろうか。もしフルタイム4WDで副変速機が省かれたなら、悪路の走破性能に不安が生じる。ジープの魅力のひとつは、ローレンジでの優れた踏破性能と低速のしたたかな走りにあるからだ。また、大きなギャップを乗り越えるためにサスペンションのストローク量も気になるところである。
瞬発力の鋭いモーターだし、大径のマッドテレーンタイヤを履いているから、登坂路も元気に駆けあがれるはずだ。だが、気になるのは低ミューの悪路を駆け上がるときだ。登り坂の途中で失速するとガソリン車より重いEVだけに転げ落ちないかと心配になってしまう。これはスタックしたときも同じだ。揉みの手法を使って脱出するとき、重い車重は大きな足かせになる。4WDシステムは機械式デフでないと、ジープらしくないと思うユーザーも多いはずだ。
EVは寒冷地での暖房性能も心配だが、これは高電圧ヒーターを装備して解決しているようだ。キャンプなど、アウトドアシーンでも不安はないように考えている。 どのくらいオフロードで楽しい走りを見せ、安心して悪路を踏破できるか、これはEVになったジープにも問われることだ。遠からず登場するであろう新世代のジープは、かなり高いポテンシャルを秘めているだろう。だが、ファンの期待度は高いので、期待半分、不安半分である。
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