誤解だらけ!? どれだけEV化が進んでもディーゼルが必要な理由


 「EVシフト」、「EVショック」。そんな言葉とともに車のEV化が瞬く間に進む……かのような風潮が加速している。一方で、ディーゼルエンジン車への逆風は強まるばかりだ。しかし、「瞬く間に世の中の車がEVになる」という極端な見方には「ちょっと待てよ」と首をかしげざるを得ない。そもそも「EVかディーゼルか」的な二元論にあまり意味はない。なぜなら、2035年時点でも車の8割強は内燃機関車と言われているからだ。そこで、本記事ではEVが本当にエコなのか、ディーゼルはもう不要なのか、客観的に考えてみたい。

文:松田秀士/写真:編集部


2035年でも8割強は内燃機関車!?

【図1】
【図1】国際エネルギー機関が作成した「エネルギー技術展望2015」をもとにマツダが作成した資料。純粋なEVは2035年時点で全体の約1割程度と予測されている

 よく考えてみよう。経済誌などはすぐにでも世の中の車がEVになるような論調だけど、皆さんは本当にそうなると思いますか?

 今、高速道路のサービスエリア(SA)に「EVquick」なる急速充電機が何基ありますか? かなりのSAに急速充電機が設置されるようになったものの、そのほとんどが1SAに1基程度。もし、世の中の車が全てEVになったら1SAに10基あっても足りないのではないだろうか? 1回の充電に30分かかるんですよ。

 では、いつになったら世の中から内燃機関のエンジンがなくなり、すべてがEVになるのだろうか。私にはわからないが、日本国内でディーゼルを推進するマツダは細かくリサーチして、その予測を立てている(【図1】)。

 それによると、2035年の時点でもハイブリッド、プラグインハイブリッド、ガソリン、ディーゼル、天然ガス車といった内燃機関を有する車がまだ約84%を占めていて、純粋なEV(電気自動車)は約11%。FCV(燃料電池車)は約5%程度と予測しているのだ。

 この推移から予測すると2050年になっても相当な数の内燃機関車が走っていることになる。まぁ、あなたが今ディーゼルやガソリン車を購入しても、すぐに価値がなくなり、下取り価格ゼロなんてことにはならないのだ。

 それをなんだか明日にでもEV時代がやってくるような無知なマスコミの誘導に乗せられてはいないだろうか? マスコミは煽ってナンボ。話題を作ることで危機感を煽り注目させることでカネになる。それは、日本だけに限らない。

現状ではEVがそれほどクリーンと言えない訳

これからますます普及が期待されるEV。車そのものは排ガス減少に大きな可能性を秘めるが、それはEVの動力を賄う発電方法の変化とセットで初めて大きな効果を生む
これからますます普及が期待されるEV。車そのものは排ガス減少に大きな可能性を秘めるが、それはEVの動力を賄う発電方法の変化とセットで初めて大きな効果を生む

 しかし、内燃機関車とEV比率の将来的予測を並べたところで、いつかは内燃機関をゼロにしましょうというのが現在の方向性。やはりEVにすれば環境負荷が極端に改善されると誰もが考えているわけだ。

 そこで「Well-to-Wheel」(井戸から車輪まで)という考え方がある。内燃機関でいうと井戸は原油を生み出す油田のこと。原油を採取し蒸留してガソリンを精製し、ガソリンスタンドに運び給油してエンジンで爆発させトランスミッションを経由して車輪を動かすまで。この一連で発生するエネルギーロスのことを指しているのだ。

 確かにEVは車だけにフォーカスすれば排気ガスを出さずクリーンだが、「Well-to-Wheel」(井戸から車輪まで)で考えると決してそうではない。

 発電所はLNG(液化天然ガス)や石油発電によって発電し、電線を経由して急速充電機などの給電施設に送られる。送電線を経由する間にもエネルギーロスが発生するし、車のバッテリーに充電するにもエネルギーロスは発生する。そのエネルギーロス分を余計に発電する必要がある。

 つまり、いくらEVのバッテリーが進化しても現在の発電方法を続ける限り、EVがそれほどクリーンな乗り物とは言い難い。EVがクリーンな乗り物であるためには、「Well-to-Wheel」(井戸から車輪まで)の井戸を、風力やソーラーなどの自然エネルギーによる発電にしなくてはいけないのだ。或いは原発だ。

 とはいえEVのメリットは、電気さえあれば走ること。そのエネルギーとなる電気は様々な方法によって作り出せる、という点なのだ。

 火力、風力、太陽光、水力、地熱、酸素と水素による発電。実に様々な方法で電気というエネルギーを作り出せるのだ。内燃機関はそうはいかない。石油という唯一の原料が必要なのだ。

 しかし、これから30年あるいはその先まで内燃機関で走る車がないと世界は動かなくなってしまう。だから、内燃機関は、まだまだ環境性能を進化させなければならないのだ。

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