2020年、トヨタは登録車の国内販売シェア51.1%を記録した。トヨタ一強の時代は続いており、全国に約5000ある地場資本を中心とした販売店(トヨタ・レクサス合算)と、圧倒的な従業員数が販売力を支え続けている。
トヨタエンブレムを付け、世に送り出されるクルマは、素晴らしいものばかりだが、性能が高く、革新的なコンセプトだからと言って、全てのクルマが順当に売れるわけではない。なかには販売力に助けられたクルマも存在する。
そこで本稿では、元トヨタ(レクサス)ディーラー営業マンの筆者が、トヨタの販売力がなければ売れなかったかもしれないクルマを紹介していく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
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■ライズ/ルーミー
2020年の乗用車ブランド通称名別順位で、堂々の2位(12万6038台)に入ったライズ、そして6位(8万7242台)に入ったのがルーミーだ。どちらも、トヨタがダイハツからOEM供給を受けるクルマである。
それぞれの兄弟車の成績を見てみよう。ライズ兄弟車であるロッキーは24位(3万1153台)、ルーミーの兄弟車であるトールは34位(1万9699台)だ。クルマとしての大きな差はないが、トヨタブランドから販売されているだけで、年間販売台数は約4倍にもなる。
ライズとルーミーがここまで売れるのには、強固なトヨタの販売網と、穴のないトヨタのラインナップがあるからだろう。トヨタじゃなければ売れなかったとは言わないが、トヨタが売ったからこそ、爆発的なヒットにつながったクルマの筆頭格だと、筆者は思う。
■イプサム
1996年に登場したイプサムは、2世代にわたり約13年のモデルライフを全うした。ミニバン市場が過熱化する中、圧倒的王者のオデッセイに対抗する、乗用車ベースのミドルサイズミニバンとして登場する。
初代では「イプー」というマスコットキャラクター(今でいう「ゆるキャラ」)を採用し、ファミリー層を狙い撃ちにした。愛くるしいイプーを使ったテレビCMは、子供受けが良かったのを覚えている。
2代目は高級志向へ変わり、シックで大人びた雰囲気をもつ。初代と2代目を合わせると、52万台以上を売り上げた。しかしながら、ミニバンブームの熱が冷めぬうちにと、突貫開発されたイプサムは、ライバルと比較すると能力的に劣る面も多い。
親しみやすさを軸にしながら、あえて子育てファミリー層の多いカローラ店ではなく、トヨペット店とビスタ店で取り扱い、上級感を意識させたのは、販売戦略の一つと考えられる。イプサムのほかにも、トヨタ販売網でなければ、大失敗した可能性があるミニバンは意外と多い。
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